宮浦健人が語る「エースの自覚」 そのスパイクが日本代表のファイナル進出を左右する
「自分は"攻める"っていう気持ちで、攻めます」
宮浦健人はそう言って、オポジットという"スパイクで相手を叩き潰すポジション"の覚悟を示している。
単純明快。彼が向き合っているのは敵なのだが、本当のところは、自分との対峙なのかもしれない。さながら古の武人のような実直さと荒々しさが、彼の魅力だろう。生き方が清冽だから、何気ないひと言もずしりとくる。まさにコート上での姿に重なる。高く跳び、体をしならせ、左腕を振り、ボールを叩き込む。強弓の化身の如く、一本の矢に人生すべてをかける簡潔さだ。
ネーションズリーグ男子2025千葉大会、日本バレーの行く末を切り開くのは宮浦だ。
ネーションズリーグでは第1週からエースとして活躍を続けている宮浦健人 7月16日、日本はドイツを3-1と下した。立ち上がりこそ、硬さが目立ったが、2セット目以降は本来の強さを発揮した。
「1セット目はバタつきました」
宮浦はそう振り返っているが、彼のスパイクが、そのまま日本の勝敗を左右するのだろう。
「(パリ五輪後)日本のホームでの初めての試合で、新しいメンバーも入ってこれまでと違ったメンバーになっていたので、空気感が違うのはありました。ちょっと様子見、というのはおかしいですけど、少しそういう部分はあったと思います」
確かに彼は泰然としていた。そして2セット目から、無双を振るっている。
結局、この日はチーム最多タイの19本のスパイクを決めた。ネーションズリーグは1週目が中国、2週目がブルガリアとそれぞれのラウンドを戦ってきたが、石川祐希、髙橋藍がいないチームを牽引したのは彼だった。同じオポジットの西田有志も休養で不在のなか、エースの面目躍如だ。
持ち味のひとつである強烈なサーブも、調子を上げていった。
「まずは今日の試合を通して、(サーブは)少しトスが低かったので、(コーチからも)アドバイスというか、少し高く修正して。とにかく攻める選択肢しかなかったです」
宮浦がそう語っているように、サーブはエラーを恐れず、攻め続けることで敵の守りを崩した。強く張った弓から繰り出すような矢が凄まじい勢いで相手を襲う。さらに急回転がかかって、手元でグニャリと変化するのだ。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

