赤土の王・ナダル、最後の全仏オープン 世界中から愛されたスペイン人は、笑顔で世代交代を受け入れた (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【錦織圭はトップ10になると断言した】

 そして、今年の全仏──。

 ナダルが「これが最後だとしても、僕の心は平穏だ」と笑顔だったのは、その才能を高く評価し、いずれ世代交代を成すと目していた若者に、敗れたからかもしれない。

 思えばナダルの慧眼は、錦織圭との初対戦後にも発揮されていた。

「彼はいずれトップ10になる。僕が保障する」と断言した当時、錦織は18歳。彼がトップ10入りしたのは、その6年後のことだった。

 それら高い予見能力を誇るナダルではあるが、唯一、見通すことができなかったのが、彼自身の未来かもしれない。

 2017年全豪オープン決勝でフェデラーとの対戦が決まった時、ナダルは「この瞬間を楽しもう! もう二度と起きないだろうから」と幾分の哀愁まじりの笑顔を浮かべていた。ただ実際には、その年のATPマスターズ1000の決勝で、ふたりは二度も対戦している。

 だから今はまだ、彼自身にも、未来はわからないのだろう。これが本当に最後のシーズンになるのか、あるいは、まだ続いていくのかは──。

プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る