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土居美咲が語る、引退ラストゲームに訪れた幸運「これ以上ない、本当に最後のご褒美でした」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 ただ、やっぱりそのなかでも、腰の状態でテニスができない、少しやると痛いという時もあって......。コートに立つことはさすがにできるとは思うけど、試合をやりきれるかは、私のなかではかなり不安だったんです。

 ちゃんと、自分を見せたかったんです。最後までプロとしてやりたかった、最後まで、ちゃんと走り抜けたかった。その目標を達成するために歩んできたので、そういう意味では、引退を決めてからのこの数カ月間、緊張の糸をずっと切らさないようにしていた。だから終わった瞬間、全部出しきったという感じでした」

 引退後は「コートに行きたい、テニスをしたい」という気持ちもまったく起きないほどに、すべてを出しきったと彼女は笑う。

 最終的に彼女に引退を決意させたケガは、腰椎分離症。それはアスリートにとって、キャリアの終焉を決意させるに十分な因子であった。

 とりわけ彼女のように、小柄な体でコートを飛び跳ねるプレースタイルの選手には......。

── 腰の痛みを覚えたのは、いつ頃だったのでしょう?

「ちょうど去年の東レ(パンパシフィックオープン)の時くらいです。シングルスの試合は腰にテープをぐるぐる巻いてやっていたし、その後のダブルスはぶっつけ本番だったんです。次の日に会場でトークショーをやったんですが、長く座っていたらその後、動けなくなっちゃって。

 本当にやばいってなったのは、それくらいからです。それまでは、痛みが出る日があってもしばらくすれば治ったのですが、去年の東レくらいからは、治らない。今年3月の頃には、近い人たちに相談を始めました」

── その頃には、引退の気持ちは決まっていたのでしょうか?

「いや、全然決まってない。全然です。その頃は、頑張る理由を探していただけだったので。それでいい状態になったら、続ける可能性もあったと思います。

 本当に引退を決めたのは、6月にヨーロッパの遠征から帰った頃ですね。その遠征に行く前には、なんとなく7〜8割方は決めていましたが。それまで2カ月間くらい試行錯誤したんです、自分としても。

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