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大坂なおみ「考えても仕方ない」。
元コーチが敵陣営も雑念なしで勝利 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 この考え方は、相手からウイナーを奪われた時にも自身を律した、彼女の勝負哲学でもある。

「今日の対戦相手は、コートのどこからでも強打を放つことができる。私にはどうしようもないことがある」

 相手の武器や美点をそのように受け止めたうえで、時折飛び出す「私にはどうしようもない」スーパーショットには、ただ称賛の拍手を送った。

 その行為の背景にある感情も、まさに、相手への敬意である。

「私は長い間、強くなりたいと思って練習してきた。だから、相手がすばらしいボールを打った時には、これこそがこの6カ月間、彼女が捧げてきた努力の成果なんだと思うことができた。世界最高レベルの選手たちと対戦できることは、私にとっても喜ばしいこと」

 この心の置きどころこそが、大坂のテニスに安定感をもたらした大きな要素だ。

 ヤストレムスカ戦での大坂は「初戦時ほどの緊張はなかった」というが、ラリーが単発に終わることも多く、「あまり動けていない」と感じていたという。

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 だからこそ彼女は、自らのサーブの精度を高め、あまり多くないであろうブレークのチャンスに集中した。

 第1セットは、第3ゲームでの2本のブレークの危機をしのぐと、直後のゲームでブレーク奪取。このコロナ禍の間に強化してきたというサーブを、球種、コースともに巧みに打ち分け、相手に的を絞らせなかった。

 第2セットでも相手のサービスゲームをブレークし、直後のゲームで瀕した危機を切り抜けると、手にした手綱を緩めずにゴールまで疾走する。相手にしてみれば、どんなに鮮やかなウイナーを決めても乱れる気配のない大坂の佇まいに、逆に心を揺さぶられただろう。

 最後は、フットフォルト(サーブの際にベースラインを踏んでしまうこと)によるダブルフォルトで、試合が決するという珍しい幕切れ。1時間10分のスピード勝利で、大坂がベスト8へと名乗りを上げた。

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