大坂なおみは変わらないために変える。
全豪OPで「矛盾の解」を探す (2ページ目)
ベスト4の結果を残した今季開幕戦のブリスベン国際について問われると、彼女は「あの大会での私は、優勝することを考えていた。いつもは1試合ずつ集中し、それがうまくいっていたのに......」と、眉を寄せて述懐する。
「すごく勝ちたかった。シーズン最初の大会だし、とてもよいオフシーズンを送っていたから、シーズンのスタートで優勝できたらと考えてしまった。準決勝に行った時は、その試合ではなく、すでに決勝のことを考えてしまった。それが問題だった」
全米を制した事実は、彼女の視線を自ずと遠くへ向けさせる。充実の仕上がりも、自身に向ける期待値を、本人も気づかぬうちに高めていた。
大坂のパフォーマンスコーチのアブドゥル・シラーは、昨年最後の試合が終わった時に「オフシーズンはみっちりトレーニング。楽しい時間になるだろうね」と不敵な笑みを浮かべたが、その成果は大坂本人にも「もっと速く動ける身体になった」と自覚させる。だからこそ、メルボルンでの彼女は、集中しきれないまま戦った準決勝で、心のざわめきを抑えることができなかった。
「とても恥ずかしい態度をコート上で取ってしまいました。試合を観ていた方たちに謝りたい」
試合後に大坂は、SNSに謝罪の自省の言葉をつづっていた。
「人間としてもっと成熟することが、今の私の最大の目標」
全豪前の会見の席で、大坂は明言する。
「そのためにも最近は、寝る前にジョークをノートに書きつづっているの。そうすれば、会見でも使えるでしょ?」
だったら、何かジョークを披露して――? そう水を向けられると、大坂は表情ひとつ変えずに即答した。
「今のはジョークよ、ごめんなさい」
会見室が再び爆笑に包まれたのは、言うまでもない。
21歳を迎えた今、もしかしたら彼女は、変わろうと自覚的に努めているのかもしれない。そうでなければ、ブリスベンで優勝にとらわれてしまったように、自分の中の何かが変わってしまうから。
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