女子ラグビー:桑井亜乃×中村知春 レフェリー・選手の異なる立場でパリオリンピックに出場した親友ふたりがスタジアム内で感動の対面を果たす (4ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【代表引退を決意】

――アルカス熊谷やリオデジャネイロオリンピックではふたりはチームメイトでした。今回、選手とレフェリーという違う立場でしたが再び、一緒にオリンピックに出場しました。

中村 桑井は私より3カ月くらいパリ大会への出場が早く決まっていたので、一緒に行けたらいいなと思っていました。実際に一緒にパリ大会に行くことになり、スタッド・ドゥ・フランスに初めてチームとして入った時に、たまたま桑井がスロープから上がってきたので、ハイタッチして少し話しました。「ここですれ違うんだ!」と思って、ちょっとゾワッっとしました。

桑井 スタジアムで会って、手を(互いに)パーンってやった時に、ウルウルじゃないですけど、ちょっと鳥肌が立っちゃった。オリンピックの会場で会ったら、「いよいよオリンピックに来たな」という感じになりましたね。

中村 レフェリー姿、格好よかったよ! 私はチームとして動いているので、今の若い選手たちと、ひとつのものを作っていくという作業ですが、桑井は結構、孤独なことも多かったと思う。今の若い選手たちは、あまり大きな目標を言わずに自分にプレッシャーをかけないようにして、保険をかけるところがありますが、桑井は絶対それをしない。それを背中で見せていく格好よさが「やっぱりすごいな」と思いますね。

桑井 この後、ご飯、おごるね。お寿司でもなんでもおごっちゃう!(笑)

――おふたりは、パリオリンピック後のキャリアプランをどうお考えですか。

桑井 方向性を決めるミーティングがあるので、そこで決めなきゃいけないなと思いますけど、パリオリンピックで出しきったので、次のオリンピックはもうないですね。今後は男子の試合にレフェリーで入っていきたい思いもあるし、7人制から15人制にどんどんシフトしていきたい気持ちもあります。

中村 代表(サクラセブンズ)は引退だと思っています。私も次のことを考えなきゃいけないんですけど......。この3年があまりにも疲労困憊すぎて、ちょっと今、やっと水面から上がってきた感じで、一回、息を整える期間にさせてもらいたい(苦笑)。

 でも、日本だけでなくアジアには可能性を感じているので、アジアのほうにも目を向けて、女子ラグビーの価値を上げていく活動ができればいいかなと思います。

 選手としてはクラブチームでは続けたいし、ラグビーを語るには私はセブンズしか知らないので、少し15人制もやっていきたい。次のオリンピックを目指したら、いい加減、下の子たちに怒られますから(苦笑)。

スペシャル対談 後編: 号泣の桑井亜乃から永遠にタックルを受け続けた中村知春 親友同士が語るラグビー愛「でも、ラグビーは愛してくれない」 >>

【Profile】
中村知春(なかむら・ちはる)
1988年4月25日生まれ、神奈川県出身。小学時代から大学までバスケットボールに励み、2010年からラグビー競技を始める。2013年に7人制ラグビー女子日本代表に初選出され、翌年にはアジア大会で銀メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロ五輪には主将として出場した。2024年のパリ五輪にも出場し、過去最高の9位に貢献。7人制ラグビーの代表キャップ73。大正製薬リポビタンDアンバサダー。

桑井亜乃(くわい・あの)
1989年10月20日生まれ、北海道出身。幼少時から陸上を始めて、帯広農業高校時代に円盤投げで国体5位入賞。中京大学卒業後の2012年にラグビー競技を本格的に始める。2013年に立正大学大学院に進み、クラブチーム「アルカス熊谷」に加入。2016年リオデジャネイロ五輪代表。2021年8月に現役引退してレフェリー転身し、パリ五輪では2試合を担当した。7人制ラグビーの代表キャップ31。大正製薬リポビタンDアンバサダー。

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