女子ラグビー:桑井亜乃×中村知春 レフェリー・選手の異なる立場でパリオリンピックに出場した親友ふたりがスタジアム内で感動の対面を果たす (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

パリオリンピックで活躍する中村知春 photo by Getty Imagesパリオリンピックで活躍する中村知春 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る

【3年間の努力が結実】

――桑井レフェリーは、リオ大会は選手として出場し、パリ大会ではラグビー界では世界で初めてレフェリーとしてもオリンピックの舞台に立ちました。

桑井 「絶対に世界初になる!」という思いは、この3年間ずっと持ち続けてやってきたので鳥肌が立ちました。レフェリーが注目されることは、そんなにないですが、いろんな方々に見てもらえる機会があってうれしかったです。

 最初はアシスタントレフェリーで試合に入りました。次の試合は自分が主審を担当しましたが、名前を呼ばれて、自分がボールを持ってグラウンドのなかに走って入っていった時、「ああ、オリンピックに戻ってきた」と思いました。この3年間の積み重ねが、一気に蘇ってきた。試合が終わった直後にインタビューを受けましたが、今までお世話になった人の顔がフラッシュバックして出てきて、ちょっと涙もろくなってしまいましたね。

中村 桑井が選手を引退したあと、レフェリーをやると聞いた瞬間に、この人は絶対オリンピックに立つと思っていましたし、本人にも「あんた絶対大丈夫だよ」って言っていました。

桑井 「なんの根拠があるの?」と聞いたんですけどね(苦笑)。

中村 有言実行の人なので! 人を巻き込むとか、応援してくれる人が一番多い人間だと思います。しかもオリンピックへの思いは、どの選手より強い。女子ラグビー界で一番オリンピックの重みもわかっているし、いろんな運命を自分のところに引き寄せてくる。

 あと、目を引くじゃないですか。ピッチに立っている時に「桑井亜乃だぜ!」という存在感があって、選手たちもみんな「亜乃さん、綺麗」と言っている。選手を引退したあとにレフェリーになるという道を作ってくれましたけど、桑井亜乃がすごすぎて、逆に道が狭まっていると思ってしまいます(苦笑)。 

桑井 ありがとうございます!

――おふたりに、試合の内容について聞きたいと思います。サクラセブンズは3勝を挙げましたが、1日目の結果(フランス、アメリカに敗戦)に悔しさが残ります。

中村 結果は悔まれますが、初日はみんな緊張していましたからね。あそこで落ち着いて、実力以上のものを出すという練習は確かにしてなかった。波のなさがサクラセブンズの今季のチームのいいところでもあったのですが、最初から気持ちを燃やしていくぞという強さは練習からやってこなかったので、そこはもう、しょうがないかな。そこはまたひとつ、次への課題ですかね。

――桑井レフェリーは主審としては、2試合を担当しました。

桑井 自分の出来として、初戦はそんなに大きなミスもなくできました。2試合目は(対戦カードを見て)どうしても規律が乱れる試合になるという予想はしていて、最初の段階ではどういうふうに整えていこうかと思っていました。でも(ペナルティーを)出すところは出してコミュニケーションを取っていったというところでは、いつもの国際大会のようなパフォーマンスを出せたかなと思います。

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