明治大ラグビー部100代目主将の涙 「前へ」進み続けた廣瀬雄也が後輩に託す伝統の継承 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【メインスタンド前に¬整列した時、目に入ってきたのは...】

 55分後に再開されるが今度は雪が降ってきて、吹雪のなかでの試合となった。再開直後の前半26分、帝京大キャプテンHO江良颯(4年)にモールからトライを許したが、廣瀬は「『雪の早明戦』を思い出しながら、グラウンドはリラックスしていた。この瞬間、ラグビーができることをみんな楽しんでいた」と笑顔で振り返った。

 その言葉どおり、明治大は雪の降るなかでもFWとBKが一体となってボールを動かし、前半35分にはCTB秋濱悠太(3年)がトライ、さらに前半終了間際にもルーキーのWTB海老澤琥珀(1年)がスクラムからトライを挙げて、12-14の2点差でハーフタイムを迎えた。

 しかし、逆転への期待が膨らんだ後半は、接点やスクラムで後手を踏んでしまい、帝京大に主導権を握られる展開となる。

「最後まで『紫紺のプライド』を持って戦おうと話していましたが、後半の入りで相手に流れを掴まれてしまった。ペナルティの数が増えて、ずっと自陣でラグビーをしてしまった......」

 廣瀬が反省するように、後半の明治大は相手の勢いを止められず、最終的に15-34でノーサイドとなった。

 試合後の廣瀬はキャプテンとして、目を赤くしながらも気丈に振る舞っていた。しかし、表彰式でメインスタンドの前に並ぶと、明治大の熱心なファンの姿が目に入ってきた。そして目線を上に動かすと、同期も含めたメンバー外となった仲間の姿があった......。

 彼らからの「廣瀬コール」が聞こえると、キャプテンは人目をはばからず嗚咽した。

「スタンドを見て、4年間応援してくれたファンの顔を見た時、100周年という節目で優勝した姿を見せられなかった悔しさと申し訳なさがこみ上がってきた。4階席には同期を含めた部員たちがいて、手を振ってくれて、自分の名前をコールしてくれて......本当に、このチームで主将をやって、明治大を選んでよかったなという思いが湧いて、涙が出てきました」

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