広島・中村奨成、プロ8年目の覚悟 「自分がもう優先される立場にないことはわかっている」
広島・中村奨成インタビュー(後編)
覚悟を決めた8年目のシーズン、広島・中村奨成の変化は単なる数字の上昇だけにとどまらない。かつては"一軍と二軍を行き来する男"と見られながらも、自らを見つめ直し、打撃技術と精神面の両方で大きく成長。フォーム改良、メンタルの立て直し、そしてベテランからの学び──。ライバルとの競争が激化する外野のポジション争いのなかで、中村の「ラストチャンス」に懸ける思いとは。
6月22日の楽天戦で逆転の二塁打を放ちお立ち台に上がった広島・中村奨成 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【悪い感覚は頭のなかから削除したい】
── 入団時から打撃技術は高い評価を受けていましたが、一方で精神面を課題とされてきました。
中村 昨年末に鈴木(清明)球団本部長と直接、契約更改の話をしていただいて「おまえのポテンシャルにもう1年かけてみる」という言葉をいただきました。今年はもう、打てなかったら先はないと、"ラストイヤー"というくらいの気持ちでいます。昨年まで7年やって、これだけの成績しか残せなかったので、一軍でもらえるチャンスも減ってくることは覚悟しながら臨んでいます。
── 好結果を残すなか、新人の佐々木泰選手の昇格によって出番が減ったように、新しい戦力に目が向くのはプロ野球の世界では常。そのなかで勝ち抜いていかないといけない世界だと思います。
中村 僕自身、3年目で初めて一軍に上げてもらって、4年目にはたくさん試合に使ってもらった経験があります。あの時は、若い選手から優先的に使ってもらったけど、僕はそこで結果を残せなかった......。これだけの年数がたった今でも、使ってもらっていることはありがたいですし、自分がもう優先される立場にないことはわかっています。
── あの時、チャンスをつかみきれなかった自分自身への感情は何かありますか?
中村 ないですね。たまに「あのときやっておけば......」という後悔はありますけど、今から変わっていければと思っています。
── 最近は、一時期よりも出場機会が限られるようになりました。そのなかで意識していることはありますか?
中村 僕は"感覚派"なので、試合でのいい感覚ってすごく覚えているんですよ。「あの球をこう打ったな」とか、「あの軌道にこう出せた」とかが残っているので、練習時間だけじゃなく、自主練習の時間も使って振り込んで感覚を思い出す作業を続けています。
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著者プロフィール
前原 淳 (まえはら・じゅん)
1980年7月20日、福岡県生まれ。東福岡高から九州産業大卒業後、都内の編集プロダクションへて、07年広島県のスポーツ雑誌社に入社。広島東洋カープを中心に取材活動を行い、14年からフリーとなる。15年シーズンから日刊スポーツ・広島担当として広島東洋カープを取材。球団25年ぶり優勝から3連覇、黒田博樹の日米通算200勝や新井貴浩の2000安打を現場で取材した。雑誌社を含め、広島取材歴17年目も、常に新たな視点を心がけて足を使って情報を集める。トップアスリートが魅せる技や一瞬のひらめき、心の機微に迫り、グラウンドのリアルを追い求める