検索

広島・中村奨成がプロ8年目の飛躍「飛ばしたい」「ホームランを打ちたい」を捨ててたどり着いた新境地

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun

広島・中村奨成インタビュー(前編)

 交流戦で苦戦しながらも、今季もセ・リーグの優勝争いに加わっている広島。新しい戦力の躍進が目立つなか、今季プロ8年目を迎えた中村奨成がカープ外野陣のなかで存在感を放っている。かつてはなかなか一軍で結果を残せなかったが、今季はここまで次々とキャリハイを更新するなど、チームの勝利に貢献。中村に飛躍を支えた転機と、自信をつかむまでのプロセスを聞いた。

プロ8年目を迎えた広島・中村奨成 photo by Koike Yoshihiroプロ8年目を迎えた広島・中村奨成 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る

【二軍降格を機にフォームを改造】

── 今季ここまで試合数、打席数、安打数はすでにキャリアハイを更新するシーズンとなっています。

中村 昨年が自己最多だったので、それをもう超えられたのは素直にうれしいですね。

── 昇格の時期や経緯は昨季と似ていますが、これほど結果に違いが出た要因はどこにあると感じられますか?

中村 昨季までは二軍で打てていたので、どんな形でも「一軍に上がれば、打てるだろう」という自信はありました。でも今年は、二軍でも打率が2割を切るほど打てていなかったんです。オープン戦から打撃内容がめちゃくちゃ悪くて、思うような打撃ができていなかったので、二軍に落ちた時にフォームを変えたんです。じつは、昇格した時もまだ変えたばかりで、自分のなかでもモヤモヤしている時だったんです。

── どのようにして状態を上げていったのですか?

中村 打席をもらうまで2週間くらいあったと思うんですけど、僕にとってはその時間が大きかったと思います。新しいことに挑戦していたなかで、二軍ではなく、一軍に帯同しながら取り組めた。やっぱり二軍で探っていくのと、一軍で探っていくのとでは違うなと感じました。一軍の試合を見ながら、また一軍の選手と練習をしながらやってきたことで、「これだ!」というものが見つけることができたと思います。

── 昨季までは二軍と一軍では違う選手のような打撃に感じられました。一軍に同行しながら調整できたことで、そういったギャップを埋められたということでしょうか。

中村 そこが一番大きいと思います。昨季までは降格する時に「二軍で多く打席に立ってきなさい」と言われてきたのですが、正直、実戦から2週間遠ざかっていても、二軍では打てたんです。でも、それをあらためて考えると、"二軍投手に対する打撃"でしかなかったんだなって。あのフォーム、あのスイングは、二軍だから打てたものだったんだなと、今になって感じています。

1 / 3

著者プロフィール

  • 前原 淳

    前原 淳 (まえはら・じゅん)

    1980年7月20日、福岡県生まれ。東福岡高から九州産業大卒業後、都内の編集プロダクションへて、07年広島県のスポーツ雑誌社に入社。広島東洋カープを中心に取材活動を行い、14年からフリーとなる。15年シーズンから日刊スポーツ・広島担当として広島東洋カープを取材。球団25年ぶり優勝から3連覇、黒田博樹の日米通算200勝や新井貴浩の2000安打を現場で取材した。雑誌社を含め、広島取材歴17年目も、常に新たな視点を心がけて足を使って情報を集める。トップアスリートが魅せる技や一瞬のひらめき、心の機微に迫り、グラウンドのリアルを追い求める

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る