明治大ラグビー部100代目主将の涙 「前へ」進み続けた廣瀬雄也が後輩に託す伝統の継承 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【明治のプライド『重戦車』には自信があったが...】

 ただ、大学選手権に入ると準々決勝で筑波大に大勝(45-7)し、準決勝では関西王者の京都産業大にも快勝(52-30)。ケガを負っていた広瀬も京産大戦で復帰し、帝京大との決勝戦には主力にケガ人のいないフルメンバーで臨んだ。

「勝たないといけない相手が決勝にきた。帝京大を超えないと日本一になれない。1年間やってきたことを出そう。100周年の節目で優勝を狙うことができるのは一生に一度。優勝したら一生語り継がれる。歴史に名を刻むのは人生に一度も二度もないので、そこを楽しもう」

 廣瀬は試合前にチームメイトを鼓舞してから、国立のグラウンドに向かった。

 キックオフ直後の前半3分、明治大はミスから相手にチャンスを与えてしまう。東福岡時代の同僚・友人である帝京大のWTB高本とむ(4年)にトライを許し、0-7と先制される。

 明治大も直後の前半6分、ペナルティゴール(PG)も狙える位置で反則を得てチャンスとなる。ただ、廣瀬の選択はPGではなく、タッチに蹴り出してトライを狙った。

「(副将のLO山本)嶺二郎を中心に『モールを組みたい』『押せる自信がある』と話していた。明治のプライドである『重戦車』には自信を持っていたので、嶺二郎が持っている言葉を信じた」

 しかし、ラインアウトのボールはオーバーボールでLO佐藤大地(3年)の手からこぼれてしまった。続く前半22分のチャンスでも、またオーバーボールで山本がキャッチできず。武器であるモールを組むことができず、得点を奪うことができなかった。

 明治大にとってはチャンスでミスが重なり、嫌な雰囲気となった前半23分、雷が鳴り響くなか雹(ひょう)も降ってきて、試合が55分間も中断することになった。過去60回の大学選手権で初の珍事だったという。ただその時、廣瀬は「試合の流れがよくなかったので、そこを断ち切ることができた」とポジティブに捉えていた。

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