男子バスケ界の次代を担う16歳の怪物・白谷柱誠ジャックへの期待と課題
A代表レベルの合宿に飛び級で招集された16歳の白谷柱誠ジャック photo by Kaz Nagatsuka
2028年ロサンゼルス五輪に向かうバスケットボール男子日本代表にとって今夏最大の目標は、8月に行なわれるFIBAアジアカップ2025。それに先駆け、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)率いる日本代表は6月13日から都内の味の素ナショナルトレーニングセンターにて、若手有望株たちの発掘や戦術への意識づけなどを目的としたディベロップメントキャンプ を実施。そのなかで最年少の16歳で選出されたのが白谷柱誠ジャック(福岡大学附属大濠高校1年)だ。
中学時代から世代の枠を超えた活躍を見せてきた身長194cmの16歳の逸材が初のトップ代表レベルのキャンプで見せた表情、そして今後への期待、課題とは−−。
前編:男子バスケ16歳・白谷柱誠ジャックのこれから
【飛び級でディベロップメントキャンプに招集】
日本の男子バスケットボール界の将来を担うべく招集された19名の選手たちの平均年齢は21.7歳。
そのなかで、最年少・16歳の白谷柱誠(ちゅそん)ジャックの振る舞いが特段浮いているかといえば、そうでもない。その様は泰然としているようで頼もしくも感じられる、表情はこちらにあどけないという形容を頭に浮かばせない。
近年の日本のバスケットボールの盛り上がりに比例して、毎年のように才能が世に紹介されている。白谷はもっとも新たな「希望」として、ファンやメディアの目を集めている。
人々は彼を「逸材」と呼ぶ。四日市メリノール学院中学では1年時から先発起用され、チームを全国中学校体育大会3連覇に導いた。今年1月のJr.ウィンターカップではチームは3位に終わったものの、準決勝で54得点、19リバウンドを挙げ(大会全体では平均36.4得点、20.4リバウンド、2.6ブロックを記録)、その才が少なくともこの年代では傑出していることを満天下に示した。
そして今月初頭。若手選手の強化を主眼とした男子日本代表のディベロップメントキャンプのロスターに、白谷は名を連ねた。15歳だった昨年、U18日本代表に呼ばれているが、4月から福大大濠高に入学したばかりの彼は今回も「飛び級」で国を代表する合宿に参加することとなった。
招集について「急な発表だった」という白谷は、「名簿の名前を見るとびっくりするというか、すごい人たちしかいないので、そこにちょっと緊張もあった」と述べた。だが、多くの記者とテレビカメラに囲まれながらの言葉はその場に響くように大きく、質問を投げかける記者の目を見つめながら話す様は、彼の「緊張もあった」という物言いがやや大仰だったのではないかと思わせるほどだった。
将来、NBAでのプレーを目標としている。先述の通り、今春からは全国大会で幾度も王座についてきた福大大濠高に進学し、そして有望株の集うディベロップメントキャンプに声がかかった。中学時代の実績はあまりに輝かしいとはいえ、NBAという壮大な目標を前提とすれば、ここで本格的に歩みを進め始めたというところだ。
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著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。