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ラグビー日本代表の元通訳が明かす「ブライトンの奇跡」の裏側 エディーHCから「ちゃんとPGを選択しろと伝えたのか!?」 (3ページ目)

  • 齋藤龍太郎●文・撮影 text & photo by Saito Ryutaro

──そんな歴史的な大会を経て、2016年から2019年までジェイミー・ジョセフHCの下で日本代表の通訳を務めました。

「サンウルブズ初代HCのマーク・ハメットが日本代表HCを代行し、敵地でのカナダ戦(日本時間2016612日)を終えた後くらいのタイミングで、ジェイミーから電話がかかってきました。『通訳はお前がいい、とエディーからもハメットからも聞いている。どうだ?』と聞かれ『ぜひ』と答えました」

──エディーさんとは全く違うタイプのコーチだったのではないでしょうか?

「発言はエディーさんのほうが端的でストレートでした。何事も全て指示するエディーさんに対し、ジェイミーはあえて話の結論をわかりづらくして意図的に考えさせるようなシチュエーションに追い込むタイプで、簡単には答えを出さないので、同じ絵を見るのに苦戦しました。考えていることやタクティックス(戦術)からはビジネスマインドを強く感じるコーチでしたね」

──4年間に渡りそのような苦労がありながら、2019年の日本大会を迎えました。

「ずっと必死でしたが、やはりラグビーに関わらせてもらっている人間として、一生に一度あるかないかの日本でのワールドカップは特別でした。日本のスポーツ史に残る大会の中枢にいられたことはものすごく名誉なことで、いい経験になりました」

──佐藤さんと仲がいいというHO(フッカー)堀江翔太選手は「ヒデさんがいなかったらチームは回らなかった」と日本大会の最中に語っていました。

「本当ですか? 僕は当たり前のことを当たり前にやっただけなのですが、翔太がちょっとでもそう思ってくれていたとしたらうれしいですね。ファンからは『ラスボス』と言われていますが、ワールドカップでは試合のラストだけでなく最初からずっとピッチに君臨して相手を蹴散らしてほしいです」

──最後に、長く関わられていた日本代表と、フランス大会そのものへの期待をお願いします。

「もちろん日本代表を応援しています。また、エディーさん率いるオーストラリア代表、そして(エディージャパン時代にコーチを務めた)スティーブ・ボーズウィック率いるイングランド代表など、他のチームにもたくさん知り合いがいるのでなおさら楽しみです。特にイングランド対日本(現地時間917日)は気持ちが入ると思います。3大会ぶりにテレビでゆっくり観戦できますので、ファン目線で楽しみたいですね」

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 チームに不可欠な「同じ絵を見る」ことを実践し、言葉でサポートし続けてきた佐藤秀典さん。グラウンド外でも様々な経験を積みながら結果を残してきたラグビー界屈指の通訳は、特別な思いで9月開幕のワールドカップを見届ける。

【profile】
佐藤 秀典(さとう・ひでのり)
1981328日生まれ、東京都渋谷区出身。横浜キヤノンイーグルス通訳。小学生の時に家族で移住したオーストラリアでラグビーに夢中になった後、徐々にデスメタルに傾倒。帰国後、トップリーグのワールドやキヤノンで2014年まで通訳を務めた後、2015年から2019年まで日本代表の通訳。NTTドコモ、スーパーラグビーのサンウルブズでも通訳を務めた。株式会社EHB International代表。履正社国際医療スポーツ専門学校「スポーツ外国語学科」学科長。デスメタルバンド「INFERNAL REVULSION」ボーカル。

著者プロフィール

  • 齋藤龍太郎

    齋藤龍太郎 (さいとう・りゅうたろう)

    編集者、ライター、フォトグラファー。1976年、東京都生まれ。明治大学在学中にラグビーの魅力にとりつかれ、卒業後、入社した出版社でラグビーのムック、書籍を手がける。2015年に独立し、編集プロダクション「楕円銀河」を設立。世界各地でラグビーを取材し、さまざまなメディアに寄稿中。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

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