最高待遇をなげうってMotoGPに参戦した玉田誠。親友・加藤大治郎への想い (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 千載一遇のチャンスに、ふたつ返事で山田の提案を了承した。このような経緯で、玉田誠はグランプリへの参戦を実現させた。ブリヂストンの熱意とホンダの理解が、玉田のMotoGP参戦を可能にさせたといってもいいだろう。

 念願のMotoGPへ参戦を果たした玉田だが、親友であり目標でもあった加藤大治郎と同じグリッドについたのは、開幕戦鈴鹿の一回だけになった。このシーズンを終えた冬、玉田に加藤のことについて訊ねたとき、言葉少なにこう述べた。

「『ありがとう』という言葉しか出てこなかったですね。遺影の前で『ありがとう、ありがとう』、それだけをずっと言っていたような気がする」

 近年では、加藤に対する敬意をこんなふうにも表現する。

「勝つためにどれだけの準備をしているのかという、レースを見ているだけなら決してわからない部分を見てきた。だから、僕は親友でありながら彼を尊敬します。あのトレーニング嫌いの大ちゃんが、MotoGPに上がるとさらに自分を追い込んで厳しいトレーニングをずっと続けていた。今で言えば、(マルク・)マルケスなんて毎日とんでもないトレーニングをしているわけでしょう。彼らトップライダーのそういう姿を目の当たりにしているから、僕らは彼らを尊敬する。つまり、才能というものは他人以上に努力できるかどうかだと思うんですよ。タイヤが滑ったとかバイクが曲がらないとか、そんなものは自分でどうにかしろって話なんです」

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