梶谷隆幸からの「もうオレは無理やわ」の電話に高森勇旗は「オレのために野球をやってくれ!」と哀願し、引退を阻止した
梶谷隆幸×高森勇旗 ベイスターズ同期入団対談(全4回/2回目)
昨年、18年のプロ野球生活で初めて優勝を味わった一方で、現役引退を決断した梶谷隆幸氏。CS、日本シリーズで躍動するかつての仲間たちを見つめながら、何を思ったのか。また現役時代、どん底にいた梶谷氏を支えた盟友・高森勇旗氏の言葉とは?
2007年度の横浜ベイスターズ新入団選手発表会。高森勇旗氏(上段左端)と横に並ぶ梶谷隆幸氏 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る
【現役生活18年目で初の優勝も...】
高森 そういえば、去年のベイスターズが日本一になった試合、カジ(梶谷)は見に行ってたんだよな。しかも(ベイスターズファンの)相川七瀬さんのインスタの後ろのほうに映り込んでいたみたいで(笑)。やっぱり持ってるね。
梶谷 気がついた人がいたみたいだね。でもベイスターズ、日本一ってすごいよ。感動したもん。だけどペナントは巨人が優勝したからね。
高森 そうだった。日本シリーズの時は引退会見後だったけど、リーグ優勝の時はまだジャイアンツの現役選手だったもんな。なんなら開幕戦でも大活躍して、優勝に貢献しているしね。
梶谷 いやいや、たかだか1試合だよ。
高森 オレの周りにいた人から「今年ジャイアンツが優勝するとしたら、あの梶谷選手のスーパープレーのおかげです」ってメッセージが複数きたよ。
梶谷 そんなことない。野球はそんなに甘くないって。もちろん、そう言っていただけることはありがたいことだけどね。
高森 でも、優勝した時はジャイアンツのメンバーの一員としての感慨はあったんでしょ。
梶谷 なんだろう......うれしいけど、喜んでいいのか不思議な感じだったよ。現役を18年やって、チームが優勝したのはじつは初めてなんだよ。だけど、その場所にいられない。しかもベテランが......だよ。これが若い時なら「グラウンドにいないのが悔しい」なんだけど、もう辞めることは決まっていたし、だからと言ってどうでもいいわけじゃない。あの優勝決定の日だけはテレビを見たもん。子どもに「YouTube終わりでいいか。パパに見せてくれ」って言って。
高森 野球を見るのが好きじゃないカジがテレビをつけた。
梶谷 あの1試合だけな。なんかわからんけど、やっぱり見たかった。みんなカッコよかったよ。「おめでとう」って、心はもうファンみたいな感覚だったのかな。「(坂本)勇人、よかったね」とか「(吉川)尚輝、フルで出てすごいよ」とか親みたいに見ていたのかもしれない(笑)。
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著者プロフィール
村瀬秀信 (むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ。神奈川県出身。茅ケ崎西浜高校野球部卒。主な著書に『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』、『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』、『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』など。近著に『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』がある。