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梶谷隆幸からの「もうオレは無理やわ」の電話に高森勇旗は「オレのために野球をやってくれ!」と哀願し、引退を阻止した (4ページ目)

  • 村瀬秀信●構成 text by Murase Hidenobu

梶谷 懐かしいな。この話、オレの結婚式の時にも友人代表で話してくれたよね。

高森 でもそうやって話せるのは、カジが気持ちを切らさずに、翌年に大復活を遂げたからだよ。

梶谷 この"切れたら終わり"の意味は、本当の最後、引退を決めた時にわかったんだよ。もうどうにも戻らない。一度切れてしまったら、人は誰が何を言おうがもうダメなんだよな。

【佐伯貴弘からの金言】

高森 あの2019年にカジは気持ちをつなぎ、その翌年はモデルチェンジもできた。さっき神里の話で言った客観的に見て「使いづらい」という状態を、コンスタントに力を出せる状態にする必要があるってことに気づけたわけだ。それってなんで気がつけたの?

梶谷 瀬戸際だったから。だからあの年のオフ、今までの考え方をやめた。使ってくれないラミちゃん(ラミレス監督)に「なんで上げてくれねえんだよ」って家で文句ばっかり言ってたけど、「オレが監督だったらどういう選手を使いたいか」を考えるようになった。オレの場合、足はあるから、コンスタントにヒットを打てたら必ず使いたくなる。だから長打は捨てた。「ホームランはゼロでいい」って、オレ言ってたじゃん。「3割を絶対に打つ」という感覚でやってみると、実際にバットに当たる確率も上がったし、レフト前とか逆方向にヒットが出るようになった。

高森 結果、打率.323を残したんだけど、不思議なものでホームランも19本打つんだよな。

梶谷 そういうものなのかもしれないよね。でも変わったものは、バッティングよりも心構えだったのかもしれない。オレ、前の年のオフに佐伯(貴弘)さんに「食事したいんです」って電話をしたんだよ。佐伯さんの気持ちであり、決めたことをやり続けられる行動力って本当にすごいだろ。その食事の席でも技術というよりも生きる術、人としての道を説いてもらって、すぐに家に帰って全部ノートに書いた。

高森 たとえばどんなことを?

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