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チャンピオンズリーグ優勝なるか パリ・サンジェルマンの注目は19歳ドゥエと強力3トップ (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【三銃士を凌駕するポテンシャル】

 レンヌのユースから昇格、17歳でプロデビュー。今季からパリSGに移籍した。すでに22試合に出場して2ゴール、6アシストを記録している。

 タイプとしてはデンベレ、バルコラ、クバラツヘリアとほぼ同じ。ドリブル突破に優れ、得点もアシストもできる。ドリブルのキレ、安定感、滑らかさは2歳下のラミン・ヤマル(バルセロナ)に似ているかもしれない。

 対峙するDFを楽々とかわしていく。瞬間的な速さもあるが、DFと向き合った時にすでに軸をずらしているのだ。体の中心とボールを置く位置をずらしていて、DFがボールに足を出してくれば体のほうへボールを引き寄せてかわす。体に来たらボール側に抜けていく。

 軸ずらしではデンベレがキング・オブ・軸ずらし。左右両足でこれができて、ずらす幅も大きく、外した後のキックが両足同等という点で突出している。クバラツヘリアも左サイドではこれ。相手しだいで縦突破とカットインを使い分ける。バルコラはリーチがあって身体操作に無理が効くのでやはり軸ずらしは得意。

 ただ、ドゥエが最も安定感があるように見える。持ち方が3人ほどあからさまでないせいかもしれない。自然体でするりと抜いていける。

 アウェーのリバプール戦では、延長前半の94分にダブルタッチのシュートがあった。右足で左へボールを動かし、そのまま左足に当ててシュートにした。惜しくも外れたが、枠に行っていたら得点だっただろう。体の向きを入れ替えつつダブルタッチのシュート。名手アリソンも意表をつかれて反応できていなかった。

 近距離のシュートでもあり技術的にやろうと思えばできないことはないが、とっさに、実にスムーズに、あれをやれること自体が才能だと思う。一瞬、何が起きたのかわからなかった。

 飄々としている。若さを感じさせない落ち着きがある。ドリブルだけでなくキックも非常に安定しているので、得点、アシストという目に見える結果を出せるのではないか。力まずに脱力している点では、デンベレがやる気を疑うほどで、クバラツヘリア、バルコラも余分な力は入っていない。うまい選手は皆そうなのだが、ドゥエは言い方が難しいけれども最もきれいに脱力できている感じがする。

 現時点では4番手のFW。しかし、やがては3人を追い抜いてエースに君臨しそうな勢いを示している。ひとりは皆のために、皆はひとりのために――『三銃士』の有名なセリフはダルタニャンを加えた4人のもので、パリSGもすでに「四銃士」になっていると考えていい。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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