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アーセナルMFライスがプレミア最高峰の理由 風間八宏「攻守においてある特別な能力がある」 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【いるかいないかで、チーム全体も変わってしまう選手】

「もちろん、チームが変わったことが大きなきっかけになったのは間違いないでしょう。ウェストハムとアーセナルではサッカーが異なっていますし、監督から求められているものも違うはずなので、その環境の変化がプレーの幅を変えたとも言えます。

 ただ、誰でもライスと同じような成長を遂げられるわけではありません。そこは、彼自身がもともとボールを正確に扱う技術を持ち合わせていたことと、先ほど話したように、守備だけでなく、攻撃のための視野をしっかり持ち合わせていたからこそだと思います。

 特に最近のサッカーは、以前と比べて攻守の局面が流動的に動くようになっています。

 たとえば、攻撃の局面では全員がボールを受けにいく必要があり、そのためのポジションをとらなければならないうえ、逆に相手ボールになった時には、自分が今いるポジションから守備を始めなければなりません。その連続性のなかでプレーし続けるために、選手は複数のポジションでプレーする能力があるのが当たり前になってきました。

 その意味で、ライスは現代サッカーで必要とされるすべての能力を兼ね備えた選手だと言えるでしょう。

 一見、不器用そうに見えるかもしれませんが、実は高いボールテクニックを持っていますし、攻守に関与するための視野もある。インターセプトを含めて相手からボールを奪うことを得意としながら、自分がボールを持った時にはほとんど失わず、攻撃の局面でも力を発揮できる。まさに、ミスの少ないオールラウンダーな選手と言えるでしょう。

 いるかいないかで、チーム全体も変わってしまう選手。監督にとっても、これ以上はないというタイプの戦力ですね」

 10代の頃からプレミアリーグで常にレギュラーとして活躍し続け、着々と進化を遂げているデクラン・ライスは、いま最も目が離せない注目のタレントのひとりだ。

 ポジション的にアタッカーほどの派手さはないが、しかしその評価は日に日に増すばかり。プレミアリーグで優勝争いを演じるアーセナルでの活躍ぶりはもちろん、今夏にドイツで開催されるユーロ2024でも、絶対に見逃せない選手と言える。

著者プロフィール

  • 風間八宏

    風間八宏 (かざま・やひろ)

    1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手、サッカーコーチを指導。今季は関東1部の南葛SCの監督兼テクニカルディレクターも務める。

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

【画像】ライスのアーセナルほか 欧州サッカー注目チームの最新主要フォーメーション

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