エムバペは「移籍するする詐欺」? レアル移籍騒動の下に隠れている思惑の数々 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【公にセリにかけ始めた】

 はっきり断るならそれでいい。ヴィトール・ロッキは、バルサに行きたいという気持ちがあったため、レアルの誘いを断った。それは理解できる。しかしエムバペは「レアルに行きたい」とほのめかしながらも、一向にやってくる気配がない。始めは歓迎ムードだったサポーターも、最近ではすっかり白けている。「来たくないなら、別に来なくてもかまわない」と思うのだろう。

 またエムバペに断られても、カリム・ベンゼマの抜けた穴をどうするかで悩んでいた去年の夏ほどは、レアル側の失望は大きくないだろう。今、レアル・マドリードにはジュード・ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴがいる。17歳ですでに世界に名前の知られるエンドリックも加入した。ここにエムバペが加わったら鬼に金棒だが、彼がいなくても十分に強い。レアル幹部のなかからも、「(アンチェロッティは望んでいるが)わざわざエムバペを獲らなくてもいいのでは?」という声が上がっている。

 ちなみにフランスとスペインの間で話が停滞しているうちに、漁夫の利を得ようとしているのがイングランドだ。なかでもリバプールはエムバペへの興味を公にしている。確かにパリでもマドリードでもサポーターはエムバペに複雑な思いを抱いているが、イングランドではまだ純粋に喜んで迎えてもらえるだろう。

 エムバペの事務所はつい先日、「エムバペは6月にフリーになる。我々はすべてのチームと交渉する用意がある」と正式に声明を出した。つまりエムバペを公にセリにかけ始めたわけだ。

 だが、エムバペにはそろそろ移籍市場の主人公ではなく、プレーで主人公になってもらいたいところだ。「エムバペ」と検索してみると、ヒットするのは移籍についての記事ばかりというのは、正直、残念すぎる。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る