エムバペは「移籍するする詐欺」? レアル移籍騒動の下に隠れている思惑の数々

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 キリアン・エムバペの周辺がまた騒がしい。

 エムバペのパリ・サンジェルマン(PSG)との契約は今年の6月に切れることになっている。そして昨年末からまた、まことしやかにレアル・マドリードへの移籍話が再浮上しているのだ。

「エムバペ、レアルに移籍か」

 だがこのニュースは実際に起きていることの氷山の一角にすぎない。その下には多くの人間の思惑が隠れている。

 もともとレアル・マドリードは今回、エムバペを積極的に獲りにいく気はなかった。それが変わったのは、カルロ・アンチェロッティが2026年まで監督の契約を更新したからだ。彼はブラジル代表監督の座を蹴って、レアルのベンチに座り続けることに決めた。その時にアンチェロッティはフロレンティーノ・ペレス会長にこう語ったと言われている。

「残るからにはチャンピオンズリーグ(CL)優勝を目指したい。そのためには優秀な選手が必要だ」

 そして、獲得してほしい4人の選手の名を挙げたという。その4人が誰かはわからない。だがそのなかにエムバペが入っていたことは容易に想像できる。アンチェロッティは以前から一貫してエムバペを高く評価していた。そこでペレス会長はフランスに人を送り、エムバペの代理人である彼の母ファイザ・ラマリに接触させた。

 ちょうどその頃、エムバペはチーム内でちょっとしたいざこざを起こしていた。ことの子細は不明だが、彼は怒ってそのことを母親に報告し、それを聞いて母親もまた腹を立てた。そこにレアルからの使者が来た。ファイザ・ラマリはこれを使わない手はないと思ったのだろう。

去就が注目されるキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン) photo by Reuters/AFLO去就が注目されるキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン) photo by Reuters/AFLOこの記事に関連する写真を見る それにしてもこの報道が世に出たのはなぜか。

 最初に報じたのはスペインのスポーツ紙『アス』と『マルカ』。どちらもマドリードに本拠地を置くレアル・マドリードの"御用新聞"だ。ネタをもらしたのはほぼレアル側と思っていいだろう。「我々はすでにエムバペと話をしている」という姿勢をいち早く公にし、他のチームを牽制したかったのかもしれない。

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