エムバペは「移籍するする詐欺」? レアル移籍騒動の下に隠れている思惑の数々 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【サポーターからは不要論も】

 それにしても、エムバペ自身は何を望んでいるのか。母の野望は聞こえてくるのに、彼の心の声は聞こえてこない。この騒動の核心は、エムバペがいつまでも沈黙を守っていることにある。「パリに残りたい」とも「レアル・マドリードに行きたい」とも、はっきり断言しない。レアル行きの噂が出ても、否定もしなければ、肯定もしない。だから周りはニュースに振り回される。彼がひと言、どうしたいかを述べれば、全ては収まるのに、エムバペは口をつぐんでいる。

 人々はまた、あの夏の茶番が始まるのかと、うんざりしている。母のファイザ・ラマリはこのやり方を賢明なものと思っているかもしれないが、それは違う。こんなことを続けていたら、エムバペは確実にリスペクトを失ってしまう。

 すでにPSGのサポーターは彼に嫌気がさしてきている。ネットで一度、スタジアムで一度「エムバペなんていらない」のキャンペーンが張られた。それはそうだろう。移籍市場が開くたびに、他のチームに出て行く話が出る選手を人々は愛せない。

 PSGの幹部はエムバペに残ってもらわないと困るが、一方で彼のためにメッシを追い出し、ネイマールを追い出し、監督を変えてきたにもかかわらず、満足しないエムバペの態度にはうんざりしている。

 2022年に契約更新した時、エムバペの年俸は7200万ユーロ(約100億円)となったがPSGのアル・ケライフィ会長はエムバペに8000万ユーロをオファーしていた。その代わり、今後の数年間はどこにも行かないという約束を(契約ではない)してほしいということだった。しかし、エムバペはこれを断った。つまり、いつかは出て行く気満々だったのだ。チーム内では「エムバペじゃなく、ナポリからヴィクター・オシムヘンを獲ればいい」という意見も上がってきている。

 レアル・マドリードも、ラブコールをしているのに一向に煮え切らないエムバペに不満だ。天下のレアルがオファーしているのに、それを受け入れないのは侮辱とも感じている。

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