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【Jリーグ連載】東京ヴェルディのアカデミーにおいて、プロになれるか否かの基準はどんな瞬間に見えてくるのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Masaki Asada

 その瞬間、解決を求める選手の視線が自分に集まるのを感じた冨樫は、「思わず、そっぽを向いちゃいました」。

 当時を思い出し、苦笑いを浮かべる冨樫は「タッチ数を制限することによって、僕が(練習メニューから)サッカーのリアリティを削いじゃったんですよね」と言い、こう続ける。

「でも、普通の選手はそういうことを言わない。やっぱり、そういう選手たちが上に行くんです。

 たとえば、僕がユースの(監督だった)時だと、中島翔哉(現浦和レッズ)が(練習メニューの)ルールから必ず外れていくんですけど、とんでもないプレーをする。で、『練習メニューからはちょっとズレるけど、でも、オレはちゃんとサッカーやってるよ。指導者として、これはどうなの?』みたいな顔をして、こっちを見るんですよね。僕にしてみれば、『ああ、オレ、試されてるなあ』みたいな(笑)。

 でも、そういうことを彼らは平気で主張してくる。そうなった時、自分が彼らに対して、この人は面白いサッカー観を持っているなとか、この人とサッカーをやったらうまくなれるなとかって思わせられるかどうかが勝負だった。結局、そういう勝負を仕掛けてくる選手が上に行っているんですよね」

 冨樫自身も現役時代、ヴェルディのアカデミーで育ち、トップチームに昇格し、他クラブへの移籍も経験した。

 そんな自身の体験も含め、「言い方は悪いですけど、(他クラブから見たらヴェルディの選手は)使いづらかっただろうなとは思います。もしかしたら、(ヴェルディからは)生意気な選手が出てくるなと思われていたかもしれません。物を言えちゃうし、それが当たり前だと思っていたし、指導者になってからも、子どもたちにもそう接してきましたから」と語る。

「三竿健斗(現鹿島アントラーズ)なんかもそうだったし、14歳だろうが、15歳だろうが、大人と対等にサッカーのやり取りをしようとしてくる選手しか、やっぱり上に行っていない。あのクラブは、そういうやり取りが非常に多かったと思います」

 ヴェルディのユースチームに所属するような選手であれば、「誰もが口ではプロになりたいと言います」と冨樫。ただし、「言うのとやるのとでは、まったく違う」。それが経験からくる、冨樫の実感だ。

「(トップに昇格してプロになった)彼らは、そもそもの行動が違う。誰かにうまくしてもらいに来ているわけじゃなくて、勝負しに来ている。だから、練習をしに来ている感覚じゃなかったんじゃないかな。

 ひとつのトレーニングが終わったら、サッと水を飲みに行って、すぐに戻ってきて、『次、何やるの?』っていう感じの選手たちが結局は上に行くし、そういう選手たちに引っ張られているチームはやっぱり強い。ヴェルディは、その層が厚いって思います」

(文中敬称略/つづく)

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