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サッカー日本代表の「圧倒的にボールを保持しながらチャンスなし」という現実をどう見るか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【可能性を感じさせた平河、鈴木】

 従来からCFの生かし方に策がないのが森保サッカーである。上田綺世、前田大然、小川航基、古橋亨梧と、誰が出ても同じ現象を招く。今回は、周囲とのコンビネーションが働きにくい分、それがより顕著となった。

 大橋と交代した町野は、今季のブンデスリーガでキールという弱小チームに在籍しながら11ゴールを奪い、「化けたのではないか」と期待された選手である。だが、20分の出場で見せ場はなかった。繰り返すが、ボール支配率で68.7%を誇ったにもかかわらずだ。

 新戦力過多というメンバー構成に加え、CFが機能しないという従来からの問題も露呈した結果だと言える。

 そうしたなかで、次がありそうなプレーを見せたのは右WBの平河だった。新人ながら周囲とよく絡み、ドリブルのみならず多彩なプレーを発揮した。右足も左足も等しく使う、言ってみれば両利きだ。欧州一に輝いたパリ・サンジェスマンのウスマン・デンベレ系の選手。現在の日本代表においては貴重なタイプだ。次回は左でプレーする姿が見たい。

 右のシャドーとして先発した鈴木唯人も何度か目を見張るプレーを見せた。次がありそうな可能性を感じさせたが、周囲とのコンビネーションには難があった。久保の投入を機に左に回ったが、うまくハマったとは言い難い。これは選手の問題というよりベンチの問題である。あらためて念を押しておきたい。 

 この0-1の敗戦は、FIFAランクに悪い影響を及ぼす敗戦だろう。山本NDはどう見るのか。

 だが、それ以上に大きな問題は、68.3%も支配しながら、チャンスらしいチャンスがなかったことだ。格下に対して、いわゆる決定機はゼロ。W杯の抽選会で晴れて(上から2番目の)第2ポットに入れても、互角ないし少し落ちる相手に対し、いまの森保式サッカーでは苦戦必至である。

 2022年カタールW杯のコスタリカ戦を彷彿させるような、今回のオーストラリア戦だった。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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