サッカー日本代表の「圧倒的にボールを保持しながらチャンスなし」という現実をどう見るか (2ページ目)
【息が合わないのは当たり前】
日本の11人の顔ぶれは新鮮だった。これまで口酸っぱく若手を使えと言い続けてきた筆者にとっては喜ばしい限りであると言いたいところだが、次第にこの実験的なメンバーの問題点が浮き彫りになっていく。
一度にこれだけの選手を変えれば、継続性、すなわち積み上げてきた土台が失われる。パスコースはよく3角形で表わされるが、3人のうちふたりが変われば、新たなコンビネーションを築く必要が生まれる。3人中ひとりなら難しくないが、この試合では場所によっては3人のうち0人だった。息が合わないのは当たり前だ。
これで「テスト」と言われても、不合格者は続出する。クオリティは高そうに見える選手も、適任者には映りにくい。新顔にとっては厳しすぎるテストになる。前半から単独ドリブルばかり強いられ、結果的に単調に映ることになった左WB俵積田はその犠牲者と言える。後半19分、その俵積田とともにベンチに下がった佐野しかり。脇にいるのは遠藤航や守田英正ではなく、代表歴で言えば後輩にあたる藤田だ。久々に招集された佐野にとって、設定の厳しいテストとなった。
俵積田、佐野に代わって投入されたのは、久保建英と中村敬斗だった。後半に入っても高いボール支配率を誇ったが、それは結果的に攻めあぐむ状態を露呈させることになった。久保、中村が入ればさすがに流れは変わるだろう。誰もがそう思ったはずだった。
右のシャドーに入った久保は投入されるや、格の違いを見せるようなボールさばきを披露した。ところが時間とともに存在感を希薄にしていく。右WBの中村に至ってはプレー機会そのものに恵まれなかった。彼らにしても、代表の常連組とはいえ、ピッチ上には常連組ではない選手が半分以上を占める。彼らと周囲の息が合わないのは当然なのだ。
後半25分、森保監督は1トップをすげ替える。大橋に代え町野修斗を投入した。大橋の話をすれば、1トップは言い換えれば攻撃の軸、中心選手である。ボール支配率の高い遅攻が続けばとなればなおさらである。だが、彼も周囲と満足に絡めずに終わった。
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