サッカー日本代表に佐野海舟が帰ってきた 佐野航大とカズ&ヤス以来32年ぶりの兄弟スタメンあるか
ワールドカップ・アジア最終予選のラスト2試合は、すでに日本代表の本大会出場が決まっていることもあり、その意味では消化ゲームとなる。だが、多くの若手が選出されたメンバー選考は注目のひとつで、さらにそのなかでも佐野海舟、佐野航大が揃って名を連ねたことに胸を躍らす人も多いことだろう。
兄・海舟は2023年の11月ラウンドで、世代別代表も含めて初めて日本代表に招集された。そしてアジア2次予選のミャンマー戦で初出場を果たし、昨年1月の国立競技場で行なわれたタイ戦にも続けて選出された。
同時に招集された佐野航大(左)と佐野海舟(右) photo by Sponichi/AFLO 弟・航大にその頃、兄について話を聞いたことがある。
「兄はいずれ海外で活躍するし、今はすごい選手たちが代表にたくさんいて難しいけれど、いずれは日本を代表する選手になると僕は思っています」
当時鹿島アントラーズに在籍していた兄について、弟は誇らしげに話した。そして航大は、まっすぐな瞳で筆者を見つめながら、続けてこう語った。
「いつかはね、日本代表で、(兄の)となりでプレーできたらと思いますよ」
きっと弟だからなのだろう、そのあたりのてらいのようなものはない。
兄・海舟に、弟に関する質問をしたことはない。しかし聞くところによると、一緒のチームになるのはちょっと......というような照れを口にしていたことがあるそうだ。
ただ、今回はクラブチームではなくて代表チーム。航大の言っていた「いつか」が叶う可能性もあるのだ。
ふたりを取材していると、兄弟は似ているようであり、一方で対照的だ。
取材現場での兄は物静かで、多くの人に囲まれることを好まないのだろうと想像がつく。それでも、自分の考えを省略せず、丁寧に話す様子には好感が持てる。物静かだからといって人が嫌い、というわけではなさそうだ。
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著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。