大迫勇也を不要とした森保一監督の判断に最大限の疑問。削るべき選手はほかにいる (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

CFに90分を戦い抜く体力は不要

 10番テイストを漂わせた9番。当初はCFにしては弱々しく、頼りなげに見えたが、それは気がつけば技巧派のCFという概念に昇華していた。

 2018年ロシア大会では、高い位置で構える大迫に、いい感じでボールが収まったことが、躍進の原因だった。日本の攻撃は大迫がパスワークに絡むとより円滑さを増した。

 想起したのは2010年南アフリカW杯だ。0トップ気味にCFを務めた本田圭佑とハマり方が似ていた。ミラクルを生んだ原因は、この時もボールが高い位置できれいに収まっていたことだ。

 釜本さんを本格派CFとするなら、大迫は技巧派CF。釜本2世の誕生を切望してきた日本サッカーだが、その願いを叶えることはできなかった。大迫もその視点に基づくと不合格になる。ただ、前回ロシア大会は、本格派ストライカーが存在しなくても、ある程度、世界に通用することがわかったことが収穫のひとつだった。

 その時、大迫は28歳で、カタールW杯を32歳で迎えることはわかっていた。4年半後も大迫を攻撃のリーダーに据えて戦ってもベスト16が精一杯。森保監督がその就任記者会見で「目標はベスト8」と述べた時、ならばこの4年半で、大迫に代わるCFを探し求める必要があると強く思ったものだ。

 しかし、大迫を超える選手は現れなかった。そして大迫は何とかコンディションを維持していた。先週末に行なわれたJリーグの川崎フロンターレ戦にフルタイム出場する姿を見て、これなら大丈夫だと安心したばかりだった。

 登録選手の枠が従来の23人で、交代枠も3人制ならば、大迫を外すか否かは微妙な問題になって当然だ。しかし、登録枠26人、交代枠5人制で行なわれるとなると話は一変する。

 大袈裟に言えば、出場時間をシェアすることになるアタッカーに、90分を戦い抜く体力は不要になる。15分でも光るプレーをする選手は貴重な戦力になる。ここがこれまでのW杯との一番の違いだ。この特性を監督が活かせるか否か。その選手交代の妙こそが浮沈のカギとなっている。

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