森保ジャパン、チーム戦術の崩壊。攻守に乱れたデータがはっきりと出た (4ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 幸い、シュートがGK権田修一と吉田の頭に続けて当たってコーナーキックとなったが、ボックス内では20番もフリーになっていたため、日本がクロスから失点を喫していても不思議ではなかった。

 他にも守備崩壊と言えるようなシーンは多かった。たとえば、この試合でオマーンが記録したクロスは16本あったが、日本が幅をとることに自重気味だった前半に浴びたクロスが4本だったのに対し、後半は12本に急増。

 そのなかには、60分のように敵陣でのボールロストによって受けたカウンターから浴びたクロス以外に、相手のスローインで始まった攻撃から供給されたクロスが4本もあった(47、51、74、85分)。そのうち1本は、長友のハンドがVARで取り消されたシーンの発端となるものだった(後半51分)。

 カウンターを受けた時ならまだしも、セットした状態からクロスまで持ち込まれる(サイド攻撃を許す)のは大問題だ。

 おそらくこのような現象が起こった最大の原因は、今年に入ってから戦った格下相手の試合にある。1試合で二桁ゴールを奪うなど、敵陣で一方的に攻撃する試合が続いたことで、日本は自陣で守るかたちを忘却。カウンターを浴びる心配もなく、敵陣で即時回収する感覚が染みついてしまい、その方法によってオマーンを攻略しようとした。

 しかし、相手のクオリティの違いに気づいたところで、時すでに遅し。試合中に軌道修正する術は持ち合わせていなかった、というのが実際のところだろう。

 仮に格下相手の試合でも、終了までゴールを目指し続けるのではなく、コントロールすることで試合を終わらせるスタンスで戦っていたら、このような事態は避けられたかもしれない。試合をコントロールするには全員が正しいポジションをとる必要があるため、守備が乱れ始めた時、それは試合中に守備の原点に立ち返るための術となるからだ。

 いずれにせよ、これだけの混乱が起きてしまうとピッチ上の選手だけで解決するのは不可能だ。そういう意味で、守備崩壊を目の当たりにしながら、何も手を打てなかった指揮官の責任は重い。

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