辛勝続き。なぜ日本代表はアウェーで苦戦するのか? (2ページ目)
また、同じ暑さでも、アジアでは種類の違う暑さがある。中東は乾燥している暑さだが、東アジアや東南アジアは湿度が高く蒸し暑い。たとえば、2002年日韓共催W杯は、湿度が高い暑さだったこともあり、イングランド代表の選手たちはこの暑さにうまく対応できなかった。生まれ育った土地以外の環境にすぐに順応するのは、簡単ではないということだ。
次に時差調整だが、これは時間が解決するもので焦らないことが肝要だ。最近では、遠征先に移動する前に、国内にいる段階から時差を合わせる方法もある。簡単なことのように受け取られそうだが、気候に体を合わせることと時差調整を複合すると、かなり難しい部分もある。
93年、ドーハでW杯アジア最終予選が行なわれたときがまさにそうだった。日本代表が初めてW杯に出られるかもしれないプレッシャーに加えて、私自身は直前のJリーグで調子が上がっていなかったこともあって、ドーハに着いて練習をしても、汗がなかなか出なかった。そのことに焦ってしまい、時差もあって夜はあまり寝られずにいた。結局、神経質になりすぎてコンディションを落としてしまい、悪循環に陥るパターンだった。
体がその土地に順応するのに1週間から10日は必要と言われているが、現在は技術の発達によってさまざまな機器を使って体の状態を数値で見られるようになっている。これは選手にとってありがたい進歩だ。科学的なデータをもちいることで、不要な焦りから時間を無駄にすることが減ったのではないかと思う。
また、『水が合う、合わない』という言葉があるくらい、食事や水というものは体調に大きく影響する。それもあって、オフト監督の時代から日本代表チームに専属の料理人が帯同し始めた。
振り返れば、この頃に日本代表はさまざまなことを変えた。それまでは移動もエコノミークラスで、選手は窮屈な空間で長時間の移動をしていたのが、オフト時代からビジネスクラスにグレードアップ。さらに、遠征のたびに異なるドクターが交代で帯同するのをやめ、専属ドクターをひとりに決めた。
気候や時差はコントロールしようがないが、水や食事、移動手段やチーム体制などは、どんなに環境が変わっても改善しようと思えばできるもの。オフト時代はさすがに水までは持っていけなかったが、代表チームがチャーター便で動くこともある今は、日本から水や食材を持っていくことも可能になっている。
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