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工藤壮人が明かした「W杯メンバー発表という重圧」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Nagata Youhei/AFLO SPORTS

 今シーズンはチーム編成上、守備の負担が増えることになった。右のFWであるはずが、周囲の選手との関係上、敵サイドバックをマークせざるを得ず、バックラインに吸い込まれることまであった。彼はその守備センスを生かし、右サイドで懸命に敵の攻撃をふたしていたが、肝心のゴールからは遠のいた。

「守備の仕事の質は評価している」

 4月の代表合宿で代表関係者に声をかけてもらい、少しは勇気づけられたが、安穏とはできない状況だった。そもそも、彼はゴールを積み重ねることでその道を作ってきたし、ライバルの選手たちが得点をしたニュースを聞くたび、忸怩(じくじ)たる思いを抱えていた。

 工藤の性格的特長は、楽天的に物事に取り組み、結果を出すまで執拗にやり続けられることにある。その際、彼は明るい空気を周囲に出す。それは持って生まれた彼の運気と言える。

「日立台の工藤は特別な存在。ゴールを決めるだけで、一瞬にして雰囲気が変わる。その現象は他の選手では起こりえない」

 チームメイトはそう口を揃える。その求心力は、人生の中で分の悪い勝負にへこたれなかったことで生まれた力だ。

 しかし、かつてフランスW杯のときに三浦知良の落選が社会問題になったように、選手にとってW杯メンバー発表前のストレスは想像を超える。工藤も、その重圧を全身で感じ取っていた。

 4月19日、15時キックオフの第8節、横浜F・マリノス戦に備えていた工藤は、不意にネルシーニョ監督から呼び出された。

「おまえ、最近どうしたんだ?」

 プロ1年目から自分を使ってくれた指揮官は、そう切り出した。

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