北嶋秀朗から工藤壮人へ。「代表入りのために今、必要なこと」
短期集中連載・世界に挑む男たち~工藤壮人(2)
2014年4月、松戸市にある店「とり竹」。柏の9番のユニフォームがサイン入りで飾られてある。行きつけにしている工藤壮人は、店員にこっそりと塩レバーを頼んだ。
「いつもあるわけじゃなくて、裏メニューなんですよ」
彼は少し自慢げに言う。この日は、その塩レバーがあった。臭みがなく、とろけるように柔らかいのに、味は濃厚。彼はそれを串ごと頬張った。
「こうやってみなさんに良くしてもらって、"自分は恵まれているな"と思います」
ウーロン茶を飲みながら言った彼は、刺身盛りも平らげた。つかつかと寄ってきた店の人が、「この伊勢エビ、殻ごとお味噌汁にする?」と声をかけ、しばらくすると塩昆布のおむすびと一緒にテーブルに運ばれてきた。彼は満面の笑みでそれを噛みしめ、胃袋に入れていった。
5月3日、鹿島戦に出場した工藤壮人(柏レイソル)「俺はゴールを取り続けることで、ここまで来られたと思います。ブラジルW杯、やはり舞台に立ってみたいですよね。この状況で(代表メンバー入りを)気にしてないと言ったら、それは嘘になります。『ザックさんが会場にきていましたが?』とか、誘導するような質問も増えましたし」
工藤はそう言ってから、店内のテレビに映し出されるプロ野球中継に視線を投げた。
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