【プロ野球】江夏豊が明かした"伝説の21球の真実" 野村克也の革命論、衣笠祥雄の心意気、古葉竹識との確執... (5ページ目)
翌年の開幕戦の日、オレは監督室のドアをノックして、こう告げた。
「去年の日本シリーズ最終戦でどうしても納得できないことがあったので、今日は帰らせてもらいます」
古葉さんは顔色を変え、謝罪してくれた。オレとしては、ひと言謝ってくれればそれで十分だった。だからこそ、そこで気持ちに区切りをつけ、新たな思いでシーズンへ入ることができた。
人によっては、意地の悪いやり方に映るかもしれない。だが、これはオレなりのケジメだ。勝負の世界で生きる者にとって、どうしても譲れないこだわりでもあった。
親友・サチの心意気、古葉さんとの確執と和解。そして野球人生でたどり着いた最高の芸術──『江夏の21球』は、さまざまな感情と人間ドラマが幾重にも重なって生まれた、二度と生まれない奇跡の連続だった。
『江夏の遺言』(小学館)
人に助けられ、裏切られた俺の人生を遺す
シーズン最多奪三振記録、オールスター9連続奪三振など不滅の記録を打ち立て、「日本プロ野球史上最高の左腕」と評される江夏豊。
日本シリーズでの「江夏の21球」など、球史に残る名シーンの主人公となった「記憶に残る投手」でもある。
世界の王貞治とのライバル関係、そして豪放な言動で数々のチームで衝突を起こした経歴から「球界のヒール役」としての印象も根強い。
軋轢の末に日本球界と決別してメジャーリーグに挑戦し、引退後は「過ち」を起こし、自戒と再起の日々を過ごした──。
野球人として、人間として波瀾万丈の人生を歩んだ江夏氏は、本書の発売日(5月15日)に78歳を迎える。
今まで言わずにいたこと、今だから言えること、今こそ言いたいこと──感謝と後悔の思いのすべてをさらけ出した。
江夏氏は本書をこう結ぶ。
〈いろいろあったが、周りの方々から支えられたおかげで今がある。感謝しかない。本当に、人に恵まれた人生だった〉
記録と記憶に残る名投手の決意の言葉は、最初から最後まで、読んだ者の心に突き刺さる。
巻末には特別寄稿「王貞治から江夏豊へ」を収録!
著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。
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