【プロ野球】江夏豊が明かした"伝説の21球の真実" 野村克也の革命論、衣笠祥雄の心意気、古葉竹識との確執... (4ページ目)
【古葉監督からの謝罪】
ノーアウト満塁で迎えた打者は、代打の佐々木恭介だった。前年には首位打者を獲得し、この79年のシーズンも打率3割2分を記録していた好打者である。
初球は、内角低めを狙ったカーブが外れてボール。その時、佐々木がわずかに反応した。ストレートだったら平然と見送ったはずで、佐々木がカーブを狙っていると確信した。そこで2球目は、ど真ん中の球を見逃しストライク。オレが言うのも何だが、佐々木はこの球は振るべきだった。
そして1ボール1ストライクからの3球目。高めのストレートを佐々木が引っ張り、打球は大きく弾みながら三塁線へ切れていった。この時、三塁手の三村敏之が、ジャンプして捕ろうとした際、グラブの先に触っていたのではないかというのだ。この件について、三村はとぼけたようにシラを切ったらしい。まあ、審判がファウルと判定した以上、ファウルだ。
こうして1ボール2ストライクと追い込んだところで、ファーストのサチ(衣笠祥雄)がマウンドへ寄ってきて、オレにこう声をかけた。
「おまえが辞めるなら、オレも一緒に辞めるから」
このひと言で、スーッと落ち着いた。なにより、自分の気持ちを敏感に察してくれたサチの心意気が、たまらなくうれしかった。そしてフルカウントから、最後はインローのカーブで空振り三振。これで1アウトとなった。
タケちゃん(北野武)は、『江夏の21球』を自作自演なんてネタにして笑わせていたけれど、オレはそんなに器用な人間じゃない。自作自演できるほどの技術があるなら、とっくに3人で片づけている。さっさと終わらせて日本一を決めたほうが、どれだけ身も心も休まることか。
次打者・石渡茂への「スクイズ外し」でピンチを脱し、広島が日本一を達成したことは、今さら説明するまでもないだろう。ただ、この試合が終わって以降、オレは古葉さんと翌年の開幕まで、まともに口をきかなかった。あのブルペンの一件が、どうしても腹に据えかねていたからだ。
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