話題の魚雷バットを検証 伊勢孝夫がプロの視点で効用と落とし穴を指摘「打ち出の小槌ではない」
今春メジャーで話題となり、NPBにも参入してきたトルピードバット(通称:魚雷バット)。公認野球規則にも適応していることから、プロ野球のみならず、アマチュアでも使用する選手が増えた。だが時間の経過とともに、徐々に関心が薄れてきたように感じる。メジャーでも屈指の強打者として知られるヤンキースのアーロン・ジャッジが、「振ったことはなく、試す気もない」とコメントしたことで、魚雷バットの真価が問われることになった。はたして、魚雷バットは単なる流行りなのか、それとも"魔法の棒"なのか。これまで数々のスラッガーを育ててきた名コーチ・伊勢孝夫氏に魚雷バットについて語ってもらった。
5月6日のオリックス戦で魚雷バットを使用し、ホームランを放った清宮幸太郎 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【魚雷バットは打ち出の小槌ではない】
私はプロ野球解説の傍ら、大阪観光大で打撃指導を行なっている。いま話題になっている魚雷バットも業者さんがサンプルを持ってきてくれたおかげで、実際に握り、スイングすることができた。
形状はやや真ん中が太めで、ボウリングのピンを彷彿とさせ、芯の部分(ミートスポット)が従来のバットより2、3センチほどグリップ寄りにある感じがした。
それに先(ヘッド)の部分が軽く、わかりやすく言えば、従来のバットをグリップ1つ分、もしくは1つ半分空けてスイングしているような感じだ。これなら、いわゆるバットの"抜け"がよく、スイングしやすいと感じる選手もいるだろう。
プロでも清宮幸太郎(日本ハム)や大山悠輔(阪神)が魚雷バットを用いるようになって、打撃内容も変わってきたようだ。特に清宮は、従来のバットでは入らなかった打球が、魚雷バットでスタンドインさせたとも報じられ話題になった。
阪神では森下翔太も、相手投手や自身の調子の変化に応じ、従来のものと使い分けていると聞く。
まあ本人が使って好感触なら、他人がどうこう言うことはない。ただ、ひとつだけ誤解してほしくないのは、魚雷バットは決してホームランやヒットを量産できる"打ち出の小槌"ではないということだ。
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著者プロフィール
木村公一 (きむらこういち)
獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。