検索

話題の魚雷バットを検証 伊勢孝夫がプロの視点で効用と落とし穴を指摘「打ち出の小槌ではない」 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 魚雷バットを使うことで結果は変わるかもしれないが、フォームそのものがよくなるとは限らない。バッティングの基本は、まず自分の打撃フォームがあって、そしてバットがあるのだ。それがバットに合わせるようなフォームになってしまうと、バッティングそのものがわからなくなってしまう危険がある。

 コンディションによってバットを変えることは、プロでもよくあることだ。チームメイトが使っているバットをちょっと借りてホームランを打ったとか、そんな話は珍しくない。

 しかし、そこで使い分けのポイントは、バットの重さやグリップの感覚だ。バッターにとってバットは、極めてデリケートなものだ。いわゆる手になじむ感覚は、人それぞれである。

 重さにしても、たとえば長距離タイプの打者は、バットの先端の微妙な重さを求める。しなりや遠心力を使って、ボールを遠くに飛ばすためだ。

 そして振った時に感じるバランス。これらすべてのものが一致するバットを、打者は求めるのだ。

 言い換えれば、自分の筋力、握力、体の使い方に合わないバットを使っていては、いい打球は飛ばせない。ホームランを打ちたいからといって、非力な選手がグリップの細い、ヘッドに重みのあるバットを振り回したところで、打てるわけがない。

 いずれにしても、魚雷バットを使いこなすまでには時間がかかる。一部の選手は、練習では使っているが、試合では使用していないという話を聞いた。使いたいと思っても、振りこなせるようになるには、相当の時間を要する。スイングそのものを変えるくらいでないと、本当の意味でのバッティングは築けない。プロのバッティングというのは、そうした積み重ねの上にあるものなのだ。


伊勢孝夫(いせ・たかお)/1944年12月18日、兵庫県出身。63年に近鉄に投手として入団し、66年に野手に転向した。現役時代は勝負強い打撃で「伊勢大明神」と呼ばれ、近鉄、ヤクルトで活躍。現役引退後はヤクルトで野村克也監督の下、打撃コーチを務め、92、93、95年と3度の優勝に貢献。その後、近鉄や巨人でもリーグを制覇し優勝請負人の異名をとるなど、半世紀にわたりプロ野球に人生を捧げた伝説の名コーチ。現在はプロ野球解説者として活躍する傍ら、大阪観光大学の特別アドバイザーを務めるなど、指導者としても活躍している

プロ野球見るなら『DMM×DAZNホーダイ』がおすすめ。
月額3,480円で視聴可能!

>>> DMM×DAZNホーダイ に今すぐ登録 <<<

パ・リーグ主催試合が見放題!過去6,000試合以上も!
月額1,595円(税込)〜!ファンクラブ割ならさらにお得!
PC、スマホ、TVで楽しもう!

>>> 「パーソル パ・リーグTV」の詳細はこちら! <<<

著者プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る