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松原聖弥を変えた明星大学での4年間 高校時代は補欠だった男は真摯に野球に向き合いプロ野球選手になった (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 高校時代の恩師である佐々木は、感慨を込めてこう語る。

「浜井さんから『(指名が)あるんじゃないか』とお聞きしていました。『あの松原が?』という驚きは、そんなにはなかったんです。むしろ『ああいうのがプロに行くんだな』という感じがしました。高校野球の最後はダメでしたけど、よくぞここまで伸びましたよね」

 松原はプロ2年目の7月に支配下登録され、5年目の2021年にはレギュラーに定着して規定打席に到達。同年に放った12本塁打は育成ドラフト指名選手としては史上最多の記録である。

 プロ入り後、阪神戦で甲子園球場の芝生を踏みしめた松原は、不思議な思いがしたという。

「ああ、ここが甲子園なんや......。甲子園で野球やってんなぁ。こんな感じなんか......」

 アルプススタンドで太鼓を叩いていた自分が、今はプロ野球選手としてフィールドに立っている。それは信じがたい現実だった。

【トレードで西武に移籍】

 そんな松原も、近年は試練が続いている。松原本人が「なんであんなに振り回したり、いらんことをいっぱいしてたんやろ」と振り返るほど、迷走するシーズンだった。

 2024年6月24日には若林楽人とのトレードで、巨人から西武に移籍。今季は4月15日に一軍登録されると、安打を連発。貧打や故障者続出に苦しむチームにあって、希望の光になりつつある。

 松原を支えた人々も、それぞれに復活を待ち望んでいる。現在は芝浦工業大の監督に就任した浜井は言う。

「彼はどんなことがあってもくじけない、いいハートを持っています。とんでもなく意外性のあるヤツですから」

 現在は学法石川で指揮をとる佐々木は、愛嬌たっぷりに今の松原とのかかわりについて語った。

「学法石川のグラウンドに来てくれたこともあるんですけど、オーラがゼロなので『プロの松原だよ』と言わないと気づかれないんです。彼のいいところは、大学でもプロでもニタニタとして苦労しているように見えないところ。柔軟性があって、みんなからかわいがられるところなんです。育英の頃から、『矢貫(俊之/元・日本ハムほか)2世だな』という話はしていましたが、次は誰が出てくるのか楽しみですよ」

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