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松原聖弥を変えた明星大学での4年間 高校時代は補欠だった男は真摯に野球に向き合いプロ野球選手になった (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「使うなら走攻守三拍子揃う選手として使いたかったんです。まずはキャッチボールができるようになること。あとは大学でしっかりとした生活を送って、体をつくること。1年かけて力をつければ、絶対に大丈夫だと思いました。松原には『2年春から必ず使うから』と伝えました」

 ここが松原にとって人生の転機だった。

【5季連続ベストナインの看板選手に】

 明星大の野球部は浜井の方針で体づくりに力を入れていた。単純にウエイトトレーニングで筋力をつけるだけではなく、身体操作性を養うマット運動もメニューに組み込まれている。松原は「走るメニューも多くて、毎日しんどかったです」と苦笑する。

 浜井は「社会人の時に体操の先生や大学教授にトレーニングを教わって、足が速くなる方法を知っていたんです」と語る。

 明星大にやってくる野球部員は、松原のように高校時代に実績のない選手も多い。そうした選手を体の使い方から鍛え直し、大学野球で戦える選手に仕上げていく。それが浜井の戦略だった。事実、高校時代に50メートル走のタイムが6秒3だった松原は、大学で5秒8まで縮めている。

 また、イップスを考慮してポジションは外野にコンバートされた。外野転向は守備に悩む松原にとって、心理的な負担を減らす作用をもたらしたという。

「外野になったことでバッティングに集中できるようになりました。守備も楽しくなりましたね」

 明星大のコーチを務める吉田祐三は、こんなシーンが強く印象に残っているという。

「松原はフェンスがあろうと、迷わず飛び込んでいくんです。打撃練習ではワンバウンドのボールをヒットにするシーンも何回か見たことがあります。この子は理性ではなく、本能でやっているんだな、本能に任せたほうが伸びるなと直感しました」

 猪突猛進のプレースタイル。フェンスに激突する恐怖心はないのかと尋ねると、松原はこう答えた。

「『あ、ぶつかるな』と思ってぶつかれば、痛くないんですよ。『ぶつかる』と思った瞬間に体が受け身の体勢になるので。それは今も同じですね」

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