【MLB】アーロン・ジャッジが無双の打撃でヤンキースの苦戦予想を一蹴 米国代表主将としてWBCへの決意も示す
開幕から絶好調の打撃でヤンキースを引っ張るジャッジ photo by Getty Images
前編:ニューヨーク・ヤンキースの2025年
昨オフの主軸打者の移籍、開幕前の右腕エースの離脱等、不安要素を抱えていたニューヨーク・ヤンキースがその大方の予想を覆し、順調な開幕ダッシュを見せている。その牽引車となっているのが主砲のアーロン・ジャッジだ。
32歳の円熟期を迎えるスーパースターは、来春のWBCへの出場も表明し、アメリカ代表のキャプテンにも就任。西の大谷翔平と対比される東のジャッジは、果たしてどのようなシーズンを送っていくのか。
【NYならミュージカルよりもジャッジの打撃】
今季もアーロン・ジャッジの打席は、ニューヨークの呼び物であり続けている。ヤンキースの背番号99が打席に立つと、ヤンキースタジアムの誰もが手を止め、足を止め、そのパフォーマンスに魅入る。多くの場合、ジャッジはその過剰なまでの期待に応え、ヤンキースファンを微笑ませる。
「アーロンが何をしても驚くことはない。彼の行動に上限を設けるつもりはない」
アーロン・ブーン監督はそう述べていたが、実際にメジャー最大の名門チームの主砲は4月21日(日本時間22日)時点で打率.384(メジャー1位)、7本塁打(同5位タイ)、25打点(同1位)、OPS(出塁率+超打率)1.188(同1位)と好成績をマーク。ただすばらしいというだけではなく、4月16日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦では3-3で迎えた7回に決勝本塁打を打つなど、印象的な活躍も多い。まさに"地元の看板"であり、今ではニューヨークに行くならブロードウェイのミュージカルよりもジャッジの打撃が見たいという人は多いのではないか。
もっとも昨季は15年ぶりのワールドシリーズ進出を果たしたヤンキースだが、2025年は苦戦を予想する声は少なくなかった。昨オフ、主軸打者のひとりだったフアン・ソトがFAで同じニューヨークのメッツに移籍し、さらにエースのゲリット・コールが右肘のトミー・ジョン手術で離脱。大きな戦力ダウンは免れないと思われたからだ。
しかし、ここまで14勝9敗と順調なスタート。ア・リーグの最高勝率(勝率.609)を残している主要因が、ジャッジの存在であることは言うまでもないだろう。
「(昨季は)球界最高のバッターがうしろにいた。おかげで相手投手は攻めてきてくれて、ストライクゾーンにボールが投げられることが多かった。敬遠四球も減った。去年は今季とは違った投球をされていたんだ」
2025年は開幕から16試合で2本塁打のみと不振だったソトは、思わずそんな言葉を発し(現在も23試合で3本塁打)、ニューヨークで大きな話題になった。昨季はヤンキースで自己最多の41本塁打を放ちながら、オフに15年・7億6500万ドル(約1147億5000万円)という史上最大の契約でメッツに移籍するも、シーズン序盤での不振の理由は、ジャッジから離れたことにあると口にしたのだ。メッツの周囲の人間は色めき立ったが、ソト自身はジャッジのすばらしさを無邪気な口調で強調しただけだったのだろう。
スポーツメディア『The Athletic』のウィル・サモン記者によると、今季走者を置いた打席でソトにストライクゾーンの真ん中付近に球が投じられる確率はここまでわずか16%。その状況で100球以上が投じられた打者に限定すれば、これはメジャー最低の数字なのだという。そういったエピソードからも、今季序盤戦ではジャッジの偉大さが改めて浮き彫りになったといえそうだ。
つい先日、来春に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではジャッジがアメリカ代表のキャプテンを務めることが発表された。その会見時のこんな言葉からは、今まさに全盛期にいる32歳のスーパースターの、今季から来春にかける想いが伝わってくる。
「(ヤンキースでの)今季も長いシーズンになることを望んでいるし、(来年の)WBCまで勢いを維持していきたい」
2024年は打率.322、58本塁打、144打点ととつもない数字を残して自身2度目のMVPに輝いた。心技体が充実して迎えている2025年、このままいけばジャッジが再びとてつもない成績を残す可能性は高い。それと同時に、ロサンゼルス・ドジャースに君臨する大谷翔平とのNo.1プレーヤー争いが世間を騒がせることになるのかもしれない。
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著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう