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松原聖弥を変えた明星大学での4年間 高校時代は補欠だった男は真摯に野球に向き合いプロ野球選手になった (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 そして、明星大の首脳陣が目を見張ったのは、松原の野球に対する姿勢である。浜井は言う。

「毎日誰よりも早くグラウンドに来て、誰よりも遅く出る。貪欲に物事に取り組める子だと感じました」

 高校時代に自主練習をサボっていた松原の姿はなかった。

 2年春になって浜井の宣言どおりレギュラーになると、5季連続で首都大学2部リーグのベストナインに選ばれる看板選手になった。

 レギュラー定着後、浜井はことあるごとに松原にこんな声をかけるようになった。

「頑張ったらプロに行けるからな」

 その時点で明星大からプロに進んだ選手はいなかった。だが、浜井の実績を知らない松原は「はい」と返事をしつつも、話半分に聞いていたという。

【育成ドラフト5位で巨人入り】

 それにしても、高校時代に自主練習を怠けがちだった松原が、大学で別人のように取り組むようになったのはなぜか。本人に尋ねると、松原は「楽しかったから」と答えた。

「大学はリーグ戦ですけど、高校野球みたいにトーナメントだと自分みたいな計算できない選手は使えないじゃないですか。だから大学野球が楽しかったんです」

 ドラフト会議が近づくにつれ、松原を視察するスカウトも増えていった。明星大を訪れたスカウトに対して、浜井はこう豪語している。

「プロに入って数年経ったら、絶対にレギュラーを獲れますから。レギュラーになれなかったら、クビでもいいです」

 2016年10月20日、育成ドラフト会議5位で巨人が松原を指名する。同年の育成ドラフト会議では楽天2位で南要輔も指名され、明星大から初のプロ野球選手が誕生した。

 自分の名前が呼ばれて初めて、松原は浜井に対して「この人、ほんまにすごい人だったんや」と実感したという。

「今までも野球で有名な人について『あいつは教え子だ』とかよく言っていたんですけど、あまりよくわかってなくて......。ドラフトで指名されて初めて、浜井さんがすごい人だったことに気づきました」

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