大谷翔平のWBCの活躍にテニス界も騒然「勝負強さに惹きつけられるの!」とアメリカNo.1女子テニス選手もぞっこん!
まずは正直に白状するなら、私が3月21日にマイアミに向かったのは、同日に開幕するテニスのマイアミオープン取材のためだった。
ただ向かうその前から、大会に参戦する日本人テニス選手の間ではワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が話題となり、みんな「見に行こう!」と盛り上がっていた気配。たしかにこの僥倖を生かさぬ手はないと、マイアミに到着したその日、WBC準決勝「日本vsメキシコ」戦が行なわれるローンデポ・パークに向かった。
把握しているかぎりでは、マイアミオープンに参戦する日本人テニス選手のうち、ダニエル太郎、日比野菜緒、加藤未唯、二宮真琴らが球場で観戦している。
皆の記憶に刻まれた大谷翔平のラストシーンこの記事に関連する写真を見る 会場に着いてまず驚いたのは、マイアミ・マーリンズの本拠地であるローンデポ・パークの独特な形状だ。左右不均衡で、外野席は狭い。雨は降っていないが開閉式の屋根は閉ざされ、ただでさえ大きなメキシコ応援団の歓声を、いっそう大きく響かせた。
日本チームは三塁側に座る"ホーム"ではあるが、会場には英語や日本語以上にスペイン語が飛び交い、完全にメキシコホームの機運である。
それはそうだろう。メキシコ湾に突き出すフロリダ半島先端の町マイアミは、中南米の人口が多く、英語よりスペイン語話者のほうが多いと言われる土地柄。ファンはメキシコフラッグをまとい、ソンブレロをかぶり、試合展開とさほど関係なく立ち上がり踊って歌いと、とにかく楽しそうだ。
とはいえ、声量では敵わないものの、熱い魂を抱く日本サポーターは山ほどいた。前に座っていた母娘も、この大会のために日本から来た渡航組。左右をメキシコファンに囲まれながらも、時に和やかに笑顔とハイタッチを交わす姿も印象的だった。
メキシコ人のファンたちが和やかだったのは、終始メキシコ優勢な試合展開のためだったかもしれない。いまさら詳細をここで記す必要もないだろうが、追いつ追われつの攻防の末、9回裏を迎えた時点でメキシコが5-4とリード。
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著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。