大谷翔平のWBCの活躍にテニス界も騒然「勝負強さに惹きつけられるの!」とアメリカNo.1女子テニス選手もぞっこん! (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

【NBAヒートのスターも来場】

 ダニエルは日ごろから、人とのつながりや気持ちの交流への感度が高いアスリート。生観戦を通じて大谷が生んだ「流れ」や「空気」を敏感に感得していたあたり、実に彼らしい体験だ。

 ココ・ガウフも胸を高鳴らせ向かった決勝戦は、NBAのマイアミ・ヒートの選手たちも詰めかけた。のちに地元紙のスポーツ担当記者に聞いたところ「マーリンズの試合はいつも空席が目立つから、あのスタジアムがあんなに熱狂的な雰囲気に包まれるのは初めて見た」と言う。

 そのスタンドの雰囲気と言えば、もちろん星条旗カラーに身を包むアメリカファンが優勢だ。初回に二塁打が生まれると、早くも「USA! USA!」の大合唱。

 このテンションで最後まで応援されたら、さすがに選手たちも(そして会場にいる日本ファンも)アウェーの空気に飲まれてしまうのでは......と心細くなる。だが、さすがにあれほどのハイテンションが続くことはなく、4回あたりではトーンダウン。4回裏の岡本和真のホームランは、その弛緩しかけた空気を切り裂くようにスタンドに刺さった。

 アメリカファンが再び色めき立ったのは、8回にダルビッシュ有がマウンドに立った時。やはり彼の知名度の高さゆえだろう、明らかにスタンドの空気が変わった。

 その異様な空気のなかでダルビッシュが1失点に抑え、大谷がマウンドに立った最終イニングでは、日米両方のファンが最初から最後まで総立ちになった。

 そしてあの、大谷対トラウトの最終決戦──。トラウトのバットが空を切った瞬間、湧き上がる歓声とハイタッチの嵐!

 ......ではあるのだが、その一方でスマホを高々と掲げながら、歴史的瞬間を動画で捕えている人たちもかなりいて、そこは邪魔してはいけないかなという遠慮も走る。ただ、スマホを構える人たちの横顔も感極まり、涙を流している人も少なくない。

 歓喜、涙、そして帰路を急ぐアメリカのファン。人々がこの一戦に投影してきた種々の思いが同時に爆ぜ、スタンドでモザイク状に光る瞬間だった。

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