平石洋介が西武のコーチになって気づいたこと。「山賊打線を基準にしてしまうとチームとしてよくない」
平石洋介インタビュー(前編)
2021年に最下位だった西武が、昨シーズンは3位と一気にAクラスまで浮上できた最大の要因に、投手陣の奮闘があった。
勝ち頭だった?橋光成の12勝を筆頭に、2ケタ勝利のピッチャーが3人。そこに、新人王となった水上由伸、最多ホールドの平良海馬、守護神の増田達至と、ゲームを締める3人も安定のパフォーマンスを誇示した。
後半戦序盤には首位に躍り出るほど投手陣の貢献度は絶大で、18年から4年連続で最下位だったチーム防御率が、昨シーズンはパ・リーグトップの2.75と数字にも裏づけられていた。
「去年は本当に、ピッチャーがあそこまでやってくれるとは思わなかったんで......」
21年の秋から西武のバッティングコーチとなった平石洋介が回想する。
今季から西武のヘッドコーチとなった平石洋介この記事に関連する写真を見る その反面、ソフトバンクから西武に移り、1年間じっくりチーム俯瞰して見続けてきたからこそ抱けた不安もあった。
「正直、最下位もあると思っていたんで。去年は、首位争いはできましたけど、『優勝できる』なんて甘い考えはまったくなかったです。野手が点をとれなかったり......ミスが出ても3位になれたのは、ピッチャーが試合を壊さなかったからです」
だからといって「3位という成績に満足していない」と、平石は唇を噛みしめる。彼の言葉にもあったように、「野手が点をとれなかった」からだ。そこさえ機能すればあるいは......皮算用かもしれないが、そう思えばこその悔しさだった。
【リーグワーストのチーム打率】
昨シーズンの西武打線は、主砲の山川穂高が41本でタイトルを獲得したことで、パ・リーグトップとなる118本のホームランを記録した。その一方で、464得点はリーグワーストの日本ハムに1点差の5位。打率.229、78犠打、60盗塁は最下位。つまり西武の攻撃陣はどこかちぐはぐな面があり、十分に機能していたとは言えないと判断されてしまう。
「うん、うん」と平石が小刻みに首肯し、ネガティブな側面を甘受しながら切り込む。
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著者プロフィール
田口元義 (たぐち・げんき)
1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。