平石洋介が西武のコーチになって気づいたこと。「山賊打線を基準にしてしまうとチームとしてよくない」 (3ページ目)

  • 田口元義●文・写真 text & photo by Taguchi Genki

 試合で9番バッターが回の先頭として打席に立つ。出塁すれば上位打線の1番にチャンスを託せる場面で、初球からワンバウンドの変化球を空振りする。「ナイススイング!」とベンチからかけ声が飛ぶ。

 こんな時、平石は心のなかで「その声は違うやろ......」と。指導者としてベンチにいたソフトバンクと楽天でも、西武打線の爆発力に脅威を感じながらも、淡白な攻撃が続き肩透かしを食らうことも少なくなかった。平石が判断するに、今の西武は後者のパフォーマンスが多いのである。

 西武がパ・リーグ連覇を果たした2018年と2019年は圧倒的な破壊力を誇り、「山賊打線」と恐れられていた。山川や外崎修汰、源田壮亮ら当時の主力がまだ健在とはいえ、今のラインナップは変わっている。だからこそ平石は、その"呪縛"からの脱却を望んでいる。

「そこを基準にしてしまうと、チームとしてもよくないのかなって思うんですよ。それこそ、僕が小さい頃だった80年代、90年代のライオンズの黄金時代って、ピッチャーはよかったけど打線もホームランを打てる選手がいればバントや走塁がしっかりできる選手がいたり、バランスがとれていたじゃないですか。だからと言って、今の選手に『こうしろ』ってがんじがらめに厳しくするわけではなくて、攻撃の幅を広げさせたいと思いながら接するようにはしていたんですけどね」

 山川のように長打が魅力の選手は、初球から積極的にバットを振ればいい。だが、攻撃を線としてつなげていくためにはそれだけではダメなのだ。だから平石は、ベンチからバッターたちの対応をくまなくチェックしながら「こうしたらどうや?」と距離を縮め、意識のアップデートを促していった。

【有望株・愛斗の意識の変化】

 成果が表れたひとりに愛斗がいる。

 21年に8本塁打とパンチ力でアピールした25歳の有望株には、バットを長く持つといったこだわりがあった。それが力強いスイングを生み、長打につながっていた反面、この年の打率2割1分9厘が示すように確実性に欠ける場面も目立っていた。

「バットを長く持って振りまわしているようなら、試合で使わない」

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