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プロ野球選手としてもっともマスクを被った男・谷繁元信が「このボールは打てない」と断言する魔球5選 (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hirohi
  • photo by Sankei Visual,Sportiva

 2007年の日本ハムとの日本シリーズ第5戦。8回までパーフェクトに抑えていた山井大介からクローザーの岩瀬に代えた。森繁和コーチが続投か否かを、僕のところに相談に来た。僕は迷わず「もしこの試合を勝ちにいくのであれば、代えたほうがいいと思います」と言った。

 中日ナインもファンも53年ぶりの日本一を渇望していた。守護神不在ならまだしも、中日には岩瀬という絶対的なクローザーがいたのだ。賛否両論はあったが、勝つための最善の策だった。

 プロ入りして15年連続50試合登板以上、9年連続30セーブ以上(通算407セーブ)、通算登板数1002試合。どれも驚異的な数字だ。普段はおっとりしているが、マウンドに上がれば無敵の守護神へと変身する。まさに偉大な投手だった。

狙い球は不可能...11種類の変化球

 最後のひとりは受けたことはないが、2006年と2007年の日本シリーズで対戦している日本ハム時代のダルビッシュ有(現・パドレス)を挙げたい。

 ダルビッシュは「変化球は自分のなかではひとつのアート」だと語っているだけに、じつに多彩だ。その数は11種類とも言われていて、代表的なものはストレート、スライダー、カットボール、シンカー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム......。

 11種類もあれば、なにか劣る球種があるものだが、ダルビッシュは全部のボールを勝負球で使えるほどのキレと精度を誇っていた。これだけのボールを自在に操ること自体、人間離れしていると言わざるを得ない。

 とにかく対戦した投手のなかでは、ダントツでナンバーワンだった。現役時代、日本シリーズに6回出場して合計27安打を放ったが、ダルビッシュから打ったヒットは、3本の指に入るぐらいうれしかった。自分のなかで打てそうな雰囲気がまったくなく、どの球種を狙ったというより、来た球にただ反応したという感じだった。内角高めのストレートを詰まりながらセンター前に運んだ1本だったが、今でもその感触ははっきり覚えている。

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