バイオメカニクスで見る佐々木朗希のすごさ。際立つ「ストライク力」と「完全アウト」の確率
ボールが速い、背が高い、下半身が強い、コントロールがいい――。佐々木朗希のすごさを語る時、そういった賞賛の言葉が並ぶ。「日本プロ野球史上最高の投手」という評価もあるが、プロ3年目の20歳は何がどれだけ優れているのか。バイオメカニクスの研究者である神事努氏に意見を求めた。
神事氏は、自らがエグゼクティブフェローを務める、スポーツデータ解析に精通する「ネクストベース」において、500人以上のピッチャーのフォームやボールの回転を計測し、100人を超えるプロ野球選手へのデータフィードバックを行なってきた。そんな神事氏が『GET SPORTS evolve VOL.2』(文化工房)で語った佐々木朗希のすごさを、特別にweb Sportivaでもお届けする。
※記事中のデータは「データスタジアム」提供
プロ3年目で飛躍を遂げたロッテの佐々木朗希 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る***
――まずは大船渡高校時代の、佐々木朗希のピッチャーとしての特徴を教えてください。
神事 ボールが速いというのが一番ですが、非常にシュート成分が多いというのが特徴でしたね。
――ストレートが自然とシュートする?
神事 そうです。一般的なピッチャーの平均値が26cmだったのに対して、佐々木投手は40cmもシュートしていました。平均より約ボール2個分もシュートしていますね。
――その理由は?
神事 投球フォームが影響していると思われます。スリークォーターからボールを投げる佐々木投手の場合、腕が斜めから出てくるためにシュート回転になります。
――インコースのボールでも、アウトコースのボールでも?
神事 そうですね。プロ1年目に千葉ロッテマリーンズの吉井理人コーチとお会いする機会があり、「この癖をどのように捉えればいいのか」と相談を受けました。
――日本球界では、「シュート回転するストレート」を敬遠する傾向がありましたね。
神事 はい。ただ、佐々木投手にとっては一番スピードが出る投げ方なので、「このままでいいのではないでしょうか」と伝えました。
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