バイオメカニクスで見る佐々木朗希のすごさ。際立つ「ストライク力」と「完全アウト」の確率 (2ページ目)

  • 元永知宏GET SPORTS evolve編集長●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

――シュート回転しないようにするために、ピッチングフォームを変えることになってしまうかもしれない。

神事 どこかを変えることで球速が落ちる可能性もあります。ひじや肩への負担を考えるのであれば、自然に投げられている今のフォームを活かして、ほかの球種、たとえばフォークだったり、スライダーやカットボールを合わせるやり方もあるだろうとお話ししました。

――これまでプロ野球では、鳴り物入りで入団した選手がフォーム改造によって思うように投げられなくなった例がたくさんあります。

神事 その点、ロッテは佐々木投手の特徴を踏まえたうえで、育成プランを立てていったのではないでしょうか。

球数を制限してできた「佐々木朗希モデル」

――2021年はオープン戦で登板し、4月にイースタン・リーグで初登板。5月16日に一軍デビューを飾りました。5月27日にプロ初勝利を挙げましたが、その後は登板間隔を空けたため、11試合の登板に終わりました(3勝2敗、防御率2.27)。

神事 投球数に制限をかけたり、登板の間隔を空けたりと、首脳陣が丁寧に確実に守りながら育成したことがわかります。

――その育成方針が2022年の飛躍につながったんですね?

神事 そうだと思います。もし佐々木投手がふたりいれば、違ったやり方を試せるのですが、そんなことはできない。だから、故障させないために慎重に、慎重にということだったのでしょう。球数を制限したことで、佐々木投手の投球パターンができました。

――それはどういうものですか?

神事 できるだけ少ない球数で長いイニングを投げようと思ったら、極力、ボール球を少なくしたほうがいい。本人がいろいろな工夫をしたことがわかります。彼はほとんどボール球を投げませんね。それが「佐々木朗希モデル」だと思います。

――佐々木朗希モデル?

神事 ストライクゾーンにどんどん投げ込んでいき、ストレートは高めに、打者の近くで落ちるフォークもストライクゾーンの低めか、少し外れるところを狙う。ストライクゾーンに来ればバッターは振らないわけにはいかないし、見送っても、ストライクなら追い込まれてしまう。

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