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【高校野球】東海大甲府の注目左腕・鈴木蓮吾、無念の初戦敗退もスカウトに証明した「素材力の高さ」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「1回戦で負けてしまったので、獲ってくれるところがあるかはわからないんですけど......。プロ志望届を出して、上でプレーできたらと思います」

 鈴木蓮吾(東海大甲府3年)は今後の希望進路を問われ、汗を拭いながらそう答えた。日本航空との山梨大会1回戦を戦った東海大甲府は0対3で敗れていた。

 地方大会の1回戦で敗れるには、あまりに惜しい逸材だった。

最速149キロを誇る東海大甲府の鈴木蓮吾 photo by Kikuchi Takahiro最速149キロを誇る東海大甲府の鈴木蓮吾 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【8回2安打の好投も初戦敗退】

 日本航空と東海大甲府の対戦は、昨夏の山梨大会決勝と同じカードである。今夏は日本航空がノーシードだったため、1回戦から強豪同士の対決が組まれたのだった。

 先発登板した鈴木は8回を投げ、被安打2、奪三振7、与四死球7、失点1と好投。とくに立ち上がりは持ち味のストレートが走っており、最速147キロをマーク。自己最速の149キロには届かなかったものの、実力を十分に発揮した。

 山日YBS球場のバックネット裏には、多くのスカウト陣が詰めかけた。要職クラスが視察に訪れた球団も目立ち、鈴木の注目度の高さを物語っていた。

 2025年のドラフト戦線で有力な高校生左腕といえば、江藤蓮(未来富山)や奥村頼人(横浜)がいる。鈴木は間違いなく、彼らと比較対象になるだろう。

 鈴木の最大の武器は、「空振りがとれるストレート」にある。スピードガンの数字以上に加速感があり、捕手のミットを突き上げる。際どいコースでも、その爽快な球筋に思わず球審の腕が上がってしまいそうなボールである。

 なぜ、こんなストレートが投げられるのか。鈴木は「肩周りが柔らかい」という要因を挙げつつ、自身の投球フォームについて語った。

「1年生の時から、指導者に『おまえは肩周りが柔らかいから、(右肩の)開きを我慢しないと、開きが早くなるぞ』と言われていました。それから右肩が開かないように、強く意識しています」

 バックネット裏から鈴木を見ると、右肩を真っすぐに捕手方向に向けたまま体重移動し、一瞬で両肩の位置を入れ替えるようにして左腕が出てくる。打者からすると、突然ボールが現われるような体感だろう。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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