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バイオメカニクスで見る佐々木朗希のすごさ。際立つ「ストライク力」と「完全アウト」の確率 (4ページ目)

  • 元永知宏GET SPORTS evolve編集長●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

ストレートとフォークの割合は半々

――160キロのストレートで空振りさせるシーンが印象的ですが、割合はどうなっていますか?

神事 ストレートの空振りは16%、ファールが49%です。彼の場合、ストレートをストライクゾーンに投げたとしても空振りはあまり取れないけど、ファールでストライクになる。必然的に、ピッチャー有利な状況をつくることができる。追い込んでから、微妙な高さに落とすフォークで空振りを取る――それが彼のパターンであり、持ち味ですね。

――緩急という意味ではどうでしょうか? 速いボールと遅いボールの差が大きければ大きいほど打ちにくいように思いますが。

神事 佐々木投手のストレートの平均速度は159.2キロ、フォークは144.7キロ。球速の比で表すと、フォークはストレートの90%ほどですね(7月1日の楽天戦まで)。落ちるだけでなく、遅いということがバッターを惑わせているのかもしれません。本人がどれだけ意識しているかわかりませんが、絶妙なスピード差だと思います。

――「いくら速いボールでもプロのバッターならいずれは慣れる」という声もありますが?

神事 対戦が多くなれば、バッターはいずれ慣れてくるでしょう。初体験よりは確実に。

――ほかのピッチャーと比べて、球種は多くありません。

神事 ストレートとフォークの2種類だけでは、いずれバッターは対応してくるでしょう。ただ、佐々木投手の場合、ストレートとフォークの割合が半々くらい。それも打ちにくい原因だと思います。

「完全アウト」の確率が高い

――あらためて、佐々木朗希のすごさとは?

神事 「完全アウト」の確率が高いこと。

――完全アウトとは?

神事 三振と内野フライを合わせたものです。このふたつの割合が高ければ、ほとんど失点につながりません。リーグ平均は26.8%ですが、佐々木投手の場合は47.4%。非常にリスクの小さいピッチャーだと言うことができる。なかなかバットに当たらないし、打球速度が上がらないから凡打になることが多い。

――もし佐々木がいまメジャーリーグで戦ったら、強打者たちを抑えることはできますか?

神事 メジャーリーガーはスイング速度が速いので、佐々木投手のスピードにも対応できるかもしれません。3球ともガンガン振ってくるため、長打のリスクも増えます。

――佐々木がもっと進化するために必要なものは何でしょうか?

神事 カットボールのように、もうひとつ、別の球種が必要です。バッターの近くで変化してゴロを打たせるボールですね。

――現在、ストレートの最速は164キロですが、今後もっと速くなるでしょうか?

神事 きちんとトレーニングを積むことで、スピードは上がるはずです。今はまだ、意図的にそれを狙っていないように見えます。もっと速いボールを投げるためには、ウエイトトレーニングが必要ですね。

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