バイオメカニクスで見る佐々木朗希のすごさ。際立つ「ストライク力」と「完全アウト」の確率 (3ページ目)
――確かに佐々木投手は、簡単にツーストライクと打者を追い込んでいるように見えます。
神事 ピッチャー有利な状況を作って、最後は三振を奪う。結果的に球数を抑えながら、長いイニングを投げられるモデルになっています。
――これまでのプロ野球では、「追い込んだら一球外せ」という方針をとるチームもありました。
神事 佐々木投手の出現によって、そういうやり方が覆されたように思います。そもそも、ストライクカウントが増えるごとに、打者の打球速度は4キロほど遅くなると言われています。
――160キロを超えるストレートを投げる佐々木投手だからできることでもあるのでしょうか?
神事 ほかのピッチャーと比較したデータがあるのですが、そのなかで佐々木投手が1位だったのは「ストライク力」でした。見逃しストライク率は16.7%と77位、空振り率は20.4%で3位、ファール率は20.7%で17位(6月7日時点。以下同)。それぞれの項目を見ると上位ではあるものの、1位のものはありませんでした。
――意外な感じがしますね。
神事 しかし、これをすべて合計した割合、つまり「ストライク力」は57・8%で1位です。球数を管理されている状態で「ボール球を投げない」ということが、この順位に関係していると思います。
――追い込んでから打ち取れない、というピッチャーもいますが、佐々木投手の場合は?
神事 追い込んでからファールで粘られてしまっては、球数が増えてしまいます。そこで重要になるのは、空振りを奪うフォークの能力です。100球以上フォークを投げた投手を見ていくと、フォークの空振り率1位は千賀滉大投手(福岡ソフトバンクホークス)で、59.6%。彼の次に空振りを奪ったのが佐々木投手で、57.4%でした。
――お化けフォークでおなじみの千賀投手に肉薄する空振り率なんですね。
神事 ストライクを奪う能力に長け、さらに空振りがほしいときにはフォークを投げる。
――この組み立てが佐々木朗希流の打ち取り方なのでしょう。
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