プロ野球選手としてもっともマスクを被った男・谷繁元信が「このボールは打てない」と断言する魔球5選 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hirohi
  • photo by Sankei Visual,Sportiva

 50センチほどの落差があって、僕が受けた投手のなかでは当然ながらトップのフォーク。投げてみないとどう落ちるかわからないフォークでは意味がない。だが佐々木さんのフォークは、ボールの縫い目が見えてきれいに回転しながら落ちる。野茂英雄さんの球は受けたことないが、ふたりのフォークは似ていると聞いたことがある。

 打たれた記憶があるのは落合博満さん。「フォークと思うから落ちるとか、落差があるように感じる。速いカーブだと思って打てばいい」と攻略した。

 ほかに対応できたのは矢野燿大さん。東北福祉大で佐々木さんの1年後輩という関係もあって、ブルペンや試合で投球をたくさん受けてきたからタイミングが合ったのかもしれない。

 とはいえ、ほとんどの打者が、佐々木さんがマウンドに上がるだけであきらめムードが漂っていた。それほど佐々木さんのフォークというのは強烈なインパクトがあった。

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打者の手元で突然変化「死神の鎌」

 横浜時代は佐々木さんというすごいクローザーがいたが、中日でも岩瀬仁紀という球史に残る守護神がいた。そのふたりのボールを受けられたことは、捕手冥利に尽きる。

 岩瀬はスライダー、シュートが一級品だった。おそらくこの球種は、左投手ではナンバーワンだと思う。しかもコントロールがいいから、イメージどおりに打者を打ちとることができた。

 とくにスライダーは、岩瀬独特の軌道だった。スライダーというボールは、いくら曲がりが大きくても、投手の指を離れた瞬間に曲がれば打者は対応できる。だが岩瀬のそれは、打者のかなり近いところまで真っすぐの軌道できて、そこから大きく曲がり始める。打者の膝もとまで食い込んでくるほどの変化とキレを持っていた。背番号13にちなんで、マスコミからつけられたスライダーの異名が「死神の鎌」だ。

 中日に移籍してきて岩瀬の投球を受け始めた頃、右打者の内角にスライダーを投げておけば、空振りか、ファウルか、フェアゾーンに入ったとしてもボテボテの内野ゴロ。あとは内角のストレート、外角のシュートの組み立てで大丈夫だった。

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