プロ注目左腕に起きた悲劇。亜細亜大の指揮官が悔やむ「パフォーマンス向上の落とし穴」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 連載第10回で紹介した急性負荷と慢性負荷は近年、パルススローのようなテクノロジーで数値化できるようになった。負荷量を管理する「ワークロード」という概念は今後ますます注目されていくだろう。

 一方、生田監督は以前から選手たちにコンディショニングノートを書かせ、経験則とともに指導してきた。自身は捕手出身で、「ピッチャーは素人だろ?」という声があるのは承知している。同時に数々の好投手を育ててきた目に自信を持ち、"新しいもの"は誰より取り入れてきた自負もある。

「僕らは選手たちのいろんな取り組みを見ながら、日々教えています。今はYouTubeから情報をたくさんとれる時代で、それはそれでいい。だからこそ、僕が言っていることと、大出がやっている動作解析にどれくらいギャップがあるかも教えてあげないといけない。松本の場合、トレーニングを受けに行ったことが悪かったという話では全然ないんです。

 選手たちにはモータスやラプソードをリンクさせながら投げたり、投げさせなかったりするなかで、『トレーニングをどうしようか』とトレーニングコーチとも話しています。そういうこともやりながら、『投げたあとと投げる前はこれを必ずやってください』というメニューもあるわけです」

根性論とテクノロジーの融合

 世間に「根性論」と言われる亜細亜大学で、生田監督がテクニカルピッチやラプソード、モータスを取り入れてきた話はあまり知られていないだろう。"投げ込み"や"300球"という文字のほうが目につきやすく、厳しいイメージとも重なるところだ。

「ウチは『投げさせすぎだ』『壊れる』と言われますけど、その分、ケアもしています。選手の意見も尊重して、記録でもちゃんと残している。プロテインもタダで提供しているし、治療代もそう。整体師やマッサージ、鍼の先生とかいろんな方が来てくれて、選手の健康管理をしてくれます。

 選手は自分の疲労度が不安だから、機械で測れるようにしています。そういうことができる人材は、僕の考え方を理論づけてくれる方たちだからパートナーとして育成していく。それが男子でも女子でもいいと思うんですよ。だから、クラブハウスは全部透明のガラスづくりにしてくださいと頼みました」

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